犬や猫の肺葉切除について│肺腫瘍や肺葉捻転で行われる治療方法
2023/07/20
犬や猫の肺は、7つに分かれており、その1つ1つの領域を「肺葉」と言います。
肺葉切除は腫瘍や捻転を起こした肺葉を全部あるいは部分的に摘出する手術のことです。
ここでは、犬や猫の肺葉切除について解説していきます。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や飼い主が気を付けるべき点
6.まとめ
■原因
肺葉切除は、肺腫瘍や肺葉捻転といった疾患で行われますが、肺全体に病変が認められる場合には肺葉切除の適応外となります。
肺腫瘍は、原発性(もともとの肺細胞が腫瘍化)と転移性(他臓器に発生した腫瘍が転移)の2つに分けられます。
犬や猫の肺腫瘍の多くは転移性腫瘍で、原発性肺腫瘍の発生は少ないと報告されています。
肺葉捻転は、肺葉が根元からねじれ(捻転)、その肺葉への血流が遮断され壊死する疾患です。右肺中葉や左右前葉に発生が多いとされ、胸水貯留がリスク因子になる可能性が示唆されていますが、はっきりとした原因は解明されていません。
犬の肺
■症状
肺腫瘍の犬や猫では症状を示さないことが多く、健康診断や術前検査などで偶然みつかるケースもあります。
症状が出る場合は、咳が最も多くそのほかには「ゼーゼー」と喘鳴音を伴う呼吸障害や食欲低下、体重減少、元気消失などがみられます。
肺葉捻転では、徐々にあるいは急性に呼吸異常や呼吸困難、元気消失、発熱、嘔吐などの症状が認められます。
■診断方法
肺腫瘍や肺葉捻転は、X線検査とCT検査、必要に応じて細胞診をすることにより診断されます。
CT検査は、心臓や骨などに邪魔されず、肺の断面を見ることができるため、病変の位置や大きさを正確に把握でき、肺葉切除を行うために大切な検査です。
■治療方法
犬や猫では、肺全容積の約60%までの切除であれば、術後に深刻な呼吸障害は起きないとされています。
一般的には、病変のある肺葉ごと摘出する全肺葉切除術が行われますが、限局した病変に対しては、部分的肺葉切除術を行うこともあります。
肺の周りには動脈・静脈・神経が存在し、さらに近くに心臓もあるため、肺葉切除は血管や神経の分離などが必要となる非常に繊細な手術です。
しかし、近年では血管を電気的に圧着して糸を使わずに血管処理ができる血管シーリングシステムや胸腔鏡を用い、リスクや負担が少なく行えるようになっています。
■予防や飼い主が気を付けるべき点
原発性肺腫瘍発症のリスク要因としては、喫煙者による副流煙、汚染物質(アスベストなど)が多い環境などが報告されています。
そのため犬や猫の近くで喫煙しないこと、または空気清浄機を取り入れるなどの対策をするといいかもしれません。
また、定期的に健康診断を受け、腫瘍を早期発見し治療を行うことも大切です。
■まとめ
今回は、犬や猫の肺葉切除について解説しました。
原発性肺腫瘍や肺葉捻転はそれほど多い疾患ではありませんが、どの子でも発症しうる可能性があるため、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
当院では2022年11月現在、全国で14名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
肺葉切除について気になることがあれば、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
■腫瘍についてはこちらのページでも解説しています
犬と猫の副腎腫瘍についての記事はこちら
犬や猫の脳腫瘍についての記事はこちら
犬と猫の肝臓腫瘍についての記事はこちら
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