犬と猫の肝臓腫瘍について│発生率は高くないものの犬では悪性の割合が高い腫瘍

2023/07/19

愛犬愛猫の食欲がない、元気がない、吐き気がある、お腹が膨らんできた、などの症状がある場合は肝臓腫瘍の可能性があります。
肝臓腫瘍の症状はわかりにくく、肝臓が広範囲に傷害されて初めて症状が現れることも少なくありません。
今回は犬と猫の肝臓腫瘍について説明します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法や飼い主が気を付けるべき点
6.まとめ

■原因

犬では肝臓腫瘍の発生はまれで、すべての腫瘍の中で1.5％未満であり、猫では犬よりも発生頻度は高く1から2.9%程度みられます。
また、犬では良性腫瘍よりも悪性腫瘍の方が多く、転移性腫瘍、すなわち脾臓、膵臓、胃腸などで発生した悪性腫瘍の肝臓への転移は、肝臓原発の腫瘍より2.5倍ほど発生頻度が多いとされています。

一方、猫においては良性腫瘍の方が悪性腫瘍より多いという報告があります。

■症状

一般的に、肝臓腫瘍のある犬猫の多くは症状がないことで知られており、猫では約半数が無症状であるとされています。

肝臓腫瘍の症状に特徴的なものはなく、元気消失、嘔吐、食欲不振、体重減少などの非特異的な症状がみられます。

症状が進行すると、お腹の中に水が貯まる「腹水」や皮膚などが黄色くなる「黄疸」などの症状が現れることもあります。

また、肝臓腫瘍が大きくなると、腹腔内が腫瘍で圧迫され、体外からも腫瘍に触ることが可能になる場合もあります。

■診断方法

肝臓腫瘍の犬猫は無症状のことも多く、いわゆる健康診断で行う血液検査、X線検査や超音波検査などのスクリーニング検査から発見されることも珍しくありません。肝臓腫瘍を疑う所見があれば、より詳しく形態を確認するCT検査や腫瘍の種類を特定する細胞診、肝生検を行うこともあります。

肝臓に大きな腫瘍があるにも関わらず血液検査の肝臓の数値は正常値である、など、１つの検査だけでは正確な診断ができないこともよくあるため、より確実な診断を行うためには複数の検査を組み合わせ総合的に判断する必要があります。

■治療方法

基本的に肝臓腫瘍の治療は、切除が可能であれば外科的手術が選択されます。
しかし、肝臓全体に広がる腫瘍や手術で切除するには難しい位置に発生した腫瘍の場合も存在し、このような腫瘍に対しては外科手術は適しません。

一方、抗がん剤治療や放射線治療など、手術以外の治療法については現時点で有効とされるものはありません。

腫瘍が外科手術によって切除できれば治療経過は良好ですが、切除できない位置にある場合や、肝臓全体に広がっている、などの場合は予後が悪いことで知られています。

■予防法や飼い主が気を付けるべき点

肝臓腫瘍の動物の半分以上は無症状であるため、別の理由で検査を行った場合に偶発的に発見されるケースが多く存在し、また、肝臓腫瘍は高齢動物での発生が多いとされています。

肝臓腫瘍の治療は外科的に切除することが理想のため、症状が進行し腫瘍が大きくなる前に治療を開始することが重要です。
愛犬愛猫の病気を早期発見するために、定期的に検査を受けましょう。

■まとめ

犬では肝臓腫瘍の発生はまれであり、良性腫瘍よりも悪性腫瘍の方が多く、転移性の腫瘍は肝臓原発の腫瘍より多いとされています。

一方、猫では犬よりも肝臓腫瘍の発生頻度は高く、良性腫瘍の方が悪性腫瘍より多いという報告があります。
一般的に、肝臓腫瘍のある犬猫の多くは無症状であることが知られており、また、肝臓腫瘍の症状に特徴的なものはなく、元気消失、嘔吐、食欲不振、体重減少などの非特異的な症状がみられます。

肝臓腫瘍の診断方法は、血液検査、X線検査、超音波検査、CT検査、細胞診、組織検査など多くの検査から総合的に判断されます。
治療は、手術による切除が可能であれば外科的手術が選択されます。
腫瘍が外科手術によって切除可能であれば治療経過は良好ですが、完全切除が難しい場合は予後が悪いことで知られています。

当院では2022年11月現在、全国で14名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
愛犬愛猫の肝臓腫瘍について気になることや疑問点などがありましたら、当院までご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

■腫瘍についてはこちらのページでも解説しています
犬と猫の副腎腫瘍についての記事はこちら
犬や猫の脳腫瘍についての記事はこちら

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〈参考図書〉
SMALL ANIMAL INTERNAL MEDICINE FOURTH EDHITION ;interzoo

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