愛犬の脳梗塞に気づけますか?症状と治療法を獣医師が解説
2025/03/06
「突然、愛犬の様子がおかしくなったけれど、どうしたらいいんだろう…」そんな不安は、いざというときに誰しも抱くものですよね。こうした急な変化はさまざまな病気が関わっている可能性がありますが、今回はその一例として脳梗塞をご紹介します。高齢の人によく見られるイメージのある脳梗塞ですが、じつは犬にも発症することがあります。早期発見・早期治療が重要な病気ですので、まずは正しい知識を身につけ、慌てず対応できるように準備をしておきましょう。
今回は、犬の脳梗塞の症状や治療法、予防策を中心に、獣医師の視点からわかりやすく解説します。
■目次
1.犬の脳梗塞とは?
2.脳梗塞ってどんな症状? 見逃せない初期サイン
3.こんな症状が出たら要注意! 即病院へ行くべきケース
4.脳梗塞の診断方法
5.脳梗塞の治療法と回復までの流れ
6.後遺症と予後:愛犬の回復をサポートするために
7.脳梗塞を予防するために:リスク要因と日常のケア
8.まとめ
犬の脳梗塞とは?
脳梗塞とは、脳内の血管が詰まってしまう病気を指します。犬の脳梗塞は、特に小脳や大脳中部で起こることが多いとされています。
その原因ははっきりとわかっていませんが、内分泌疾患(甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症)や高脂血症などが主に関わっているのではないかといわれています。それ以外にも、血栓症や腫瘍、動脈硬化なども原因として考えられています。
通常は中高齢で発症することが多く、どんな犬種でも起こりうる病気です。
脳梗塞ってどんな症状? 見逃せない初期サイン
脳梗塞は血管が詰まると、すぐに症状が現れます。一般的には数時間から数日のうちに、壊死した部分の機能に関わる神経症状がみられます。次のような症状に気づいたら、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。
・急な歩行異常・ふらつき
・立てなくなる
・うずくまる
・発作
・首をかしげる(斜頸)
・目が揺れる(眼振)
・刺激に対する反応が悪くなる
眼振についてはこちらをご覧ください
こうした症状は悪化することもありますが、犬ではその後徐々に改善することが多く、人の脳梗塞ほど重症にならないといわれています。ただし、一命をとりとめたとしても後遺症が残る可能性があります。
また、症状の出方や重症度には個体差があります。左右どちらかに偏った異常が見られることも多く、「急に片側だけおかしい」という場合は要注意です。
こんな症状が出たら要注意! 即病院へ行くべきケース
脳梗塞に限らず、神経系の病気は進行が早いことが多く、放置すると命に関わるリスクが高まります。特に以下のような場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
・意識がもうろうとしている、もしくは失神状態に近い
・歩行異常やふらつきが急に始まり、悪化しそうな様子がある
・ぐったりして動けない状態
もし、かかりつけ病院が休診の場合は、夜間・休日対応の動物病院や救急病院を利用してください。不測の事態に備え、事前に夜間対応病院の場所を調べておくと安心です。
脳梗塞の診断方法
神経症状が現れた場合、どこに異常があるのかを調べるため、神経学的検査を行います。具体的には、歩き方や意識の状態、姿勢反応、脊髄反応、目の反射、知覚などを調べることで、おおよその病変部位を推測します。
あわせて、原因となっている病気を見つけ出すための検査(血液検査、ホルモンの検査など)を行うこともあります。
その後、他の神経病の可能性を排除したり、詳細な部位を特定して治療方針を考えたりするために、CTやMRIを実施することもあります。
脳梗塞の治療法と回復までの流れ
脳梗塞に対する治療は、急性期と回復期でアプローチが異なります。
〈急性期(命の保護が最優先)〉
症状に応じて血圧を下げる薬や炎症を抑える薬、けいれんを緩和する薬などを使用します。補助的に輸液や酸素吸入を行うこともあります。
急性期は、重症度によっては数日~1週間程度の入院が必要になることがあります。症状が安定してきたら、少しずつ回復期の治療・ケアに移行します。
〈回復期(リハビリで機能回復を目指す)〉
人間の場合は致死的なイメージがあるかもしれませんが、犬では来院時点で既にある程度時間が経過していることが多く、人のように“致死的”なイメージよりも徐々に回復していくケースも少なくないと考えられています。この時期にはリハビリテーションが重要になり、麻痺した手足の運動機能を取り戻すため、意識的に体を動かします。
また、内分泌疾患や腫瘍などが背景にある場合は、それらに対する治療も並行して実施します。
後遺症と予後:愛犬の回復をサポートするために
脳梗塞から回復しても、以下のような後遺症が残る可能性があります。
・手足の麻痺、ふらつき
・発作・けいれん
〈ご家庭でのケアのポイント〉
回復期のケアは、麻痺やふらつきを改善させるために実施します。まずは後遺症の程度を見極め、その段階に応じて無理のない範囲でリハビリを試みましょう。
ご家庭では、手足のマッサージや曲げ伸ばしから始め、立ち上がる動作、短い距離での歩行など、徐々にできることを増やしていくことがポイントです。また、持病をもっていると再び脳梗塞が起こったり、後遺症による発作が現れたりする可能性があります。歩けるようになってからも定期的に動物病院を受診して、健康状態をチェックしましょう。
脳梗塞を予防するために:リスク要因と日常のケア
犬の脳梗塞は、ホルモンの病気や高脂血症、血栓症、腫瘍、動脈硬化などが原因になることがあります。そのため、こうした病気を持病にもつ場合は、早めに治療を始めることが大切です。中でも、高脂血症は普段の食事管理や適度な運動で予防ができます。
また、中高齢で発症することが多いので、シニア期に入ったら健康診断の回数を増やすことも検討しましょう。
まとめ
犬の脳梗塞は、突然起こる病気です。いざというときに冷静な判断ができるように、正しい知識を身につけておきましょう。また、回復期にはご家庭でのケアや定期的な動物病院の受診が必要不可欠です。獣医師と相談しながら、愛犬にとってベストなケアの方法を考えていきましょう。
別の神経の病気によってふらつきなどの症状が現れている可能性もあるので、少しでも不安に思う点があれば当院までお気軽にご相談ください。
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<参考文献>
Neurological signs in 23 dogs with suspected rostral cerebellar ischaemic stroke – PMC (nih.gov)
Results of Diagnostic Investigations and Long‐Term Outcome of 33 Dogs with Brain Infarction (2000–2004) – Garosi – 2005 – Journal of Veterinary Internal Medicine – Wiley Online Library
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
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