犬の脳梗塞について┃ふらつく、立てなくなるなどの症状がみられる
2024/04/08
脳梗塞とは、様々な原因で脳の血管が詰まってしまい、血液が行きわたらなくなることで脳組織が壊死する病気です。いわゆる脳卒中の1つとして知られていて、人では生活習慣が発症に関わっているともいわれています。犬では人にくらべて非常にまれとされてきましたが、最近ではCTやMRIが普及しはじめて、診断される機会が増えてきました。
今回は犬の脳梗塞について、今わかっている情報をもとに、症状や治療法などを解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
◼️原因
犬の脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまうことで引き起こされます。
その原因ははっきりとわかっていませんが、内分泌疾患(甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症)や高脂血症などが主に関わっているのではないかといわれています。それ以外にも、血栓症や腫瘍、動脈硬化なども原因として考えられています。
通常は中高齢で発症することが多く、どんな犬種でも起こりうる病気です。
◼️症状
血管が詰まると、すぐに症状が現れます。
一般的には数時間から数日のうちに、壊死した部分の機能に関わる神経症状がみられます。具体的には、うまく歩けない、ふらつく、立てなくなる、うずくまる、首をかしげたままになる(斜頚)、目が揺れる(眼振)、刺激に対する反応が悪くなるなどが挙げられます。
こうした症状は悪化することもありますが、犬ではその後徐々に改善することが多く、人の脳梗塞ほど重症にならないといわれています。ただし、一命をとりとめたとしても後遺症が残る可能性があります。
◼️診断
神経症状が現れた場合、どこに異常があるのかを調べるため、神経学的検査を行います。具体的には、歩き方や意識の状態、姿勢反応、脊髄反応、目の反射、知覚などを調べることで、おおよその病変部位を推測します。
あわせて、原因となっている病気を見つけ出すための検査(血液検査、ホルモンの検査など)を行うこともあります。
その後、他の神経病の可能性を排除したり、詳細な部位を特定して治療方針を考えたりするために、CTやMRIを実施することもあります。
◼️治療
病変の部位や症状の程度、原因によって異なりますが、犬では来院時に発症から時間が経過していることがほとんどで、徐々に改善することが多いため、あまり手術になることはありません。脳へのダメージを最小限にするため酸素吸入や輸液、利尿薬を使用し、ステロイド剤の投与を検討することもあります。
症状が落ち着いた後は、リハビリテーションを行いダメージを受けた神経機能の回復を図ります。
また、内分泌疾患や腫瘍などが背景にある場合は、それらに対する治療も並行して実施します。
◼️予防法やご家庭での注意点
発症原因がよくわかっていないため、予防は難しい病気です。
しかし、症状は急に現れるため、突然歩けなくなったり反応が鈍くなったりするようであれば、すぐに動物病院で検査を受けましょう。
◼️まとめ
脳梗塞は人の病気として有名ですが、犬でも起こりうる病気です。人と違って死につながることは少ないですが、後遺症が残る可能性もあります。また、別の神経の病気によってふらつきなどの症状が現れている可能性もあるので、少しでも不安に思う点があれば当院までお気軽にご相談ください。
◼️当院の脳神経科に関連する記事はこちらから
犬と猫の脳炎について│歩行・行動の異常や発作などがみられたら脳炎の可能性が
犬と猫のてんかんについて
犬と猫の水頭症について
犬や猫の脳腫瘍について
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
愛犬のことでお困りの際は、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
埼玉県三郷市・吉川市・八潮市・越谷市で神経疾患・整形疾患の診療を受けるなら
とがさき動物病院
<参考文献>
Neurological signs in 23 dogs with suspected rostral cerebellar ischaemic stroke – PMC (nih.gov)
Results of Diagnostic Investigations and Long‐Term Outcome of 33 Dogs with Brain Infarction (2000–2004) – Garosi – 2005 – Journal of Veterinary Internal Medicine – Wiley Online Library
« 前の情報を読む
次の情報を読む »
» 最新情報一覧