犬の神経学的検査|専門家が行う検査の流れと受診のタイミング
2025/06/30
「いつもと様子が違う」「歩き方がおかしい」「顔が左右非対称になっている」そんな愛犬の変化を見たとき、「元に戻るのかな…」「どこに相談したらいいんだろう…」と不安になりますよね。
こうした異変は、神経症状の可能性があり、突然現れることも少なくありません。放置すると症状が進行してしまうおそれもあるため、早期発見・早期治療が何より大切です。
正確な診断には、神経学的検査が欠かせません。かかりつけ医だけでなく、必要に応じて神経疾患に詳しい動物病院での検査・治療も検討することが重要です。
今回は犬に起こる神経症状と、それに対する神経学的検査について、順を追ってご説明します。
■目次
1.犬の神経症状とは? 見逃せないサイン
2.神経症状を引き起こす主な原因
3.神経学的検査とは? 専門家ができること
4.精密検査について(MRI、CT、脳脊髄液検査など)
5.専門病院への受診のタイミングと準備
6.まとめ
犬の神経症状とは? 見逃せないサイン
神経症状はさまざまなかたちで現れます。ご家庭では、以下のような変化がないか注意深く観察してみましょう。
・頭を傾ける
・目の動きの異常(揺れる・焦点が合わないなど)
・ふらつきや歩き方の変化
・けいれん
・意識レベルの低下
この中でも、意識を失う、けいれんが止まらないなどの症状が見られた場合は、命に関わる可能性があります。迷わず、すぐに動物病院を受診してください。
また、症状が出た際にはスマートフォンなどで動画を撮影しておくと、診断の大きな助けになります。
神経症状を引き起こす主な原因
さきほど触れたように、神経症状は多種多様の病気によって引き起こされます。
・脳疾患:脳炎、脳腫瘍、水頭症、てんかんなど
・脊髄疾患:椎間板ヘルニア、脊髄変性症、脊髄腫瘍など
・末梢神経疾患:重症筋無力症など
・代謝性疾患:低血糖、ミネラル異常、肝性脳症など
・中毒:人用薬や殺虫剤などの誤飲・誤食によるもの
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これらの病気は、犬種や年齢によってもリスクが変わってきます。
例えば、水頭症は若齢の小型犬(チワワなど)に多く、腫瘍は高齢の犬で多く見られます。検査・診断においては、こうした背景も考慮した上で原因の特定を進めていきます。
神経学的検査とは? 専門家ができること
神経学的検査では、意識や歩行の状態に加え、姿勢反応や脊髄反射、脳神経の反射・反応、知覚の有無などを確認し、どの部位に病変があるのか、どのような疾患が考えられるのかを評価します。一般的には以下のような検査が含まれます。
・姿勢反応検査:固有位置感覚、踏み直り反応など
・脊髄反射検査:膝蓋腱(四頭筋)反射、前脛骨筋反射など
・脳神経検査:顔面の対称性、眼瞼反射など
こうした検査は、獣医神経病学会が定めた評価基準に基づいて行われますが、微妙な変化を見極めるには豊富な経験が不可欠です。神経専門の獣医師は、これらの症状を的確に観察し、早期かつ正確な診断へとつなげることができます。
精密検査について(MRI、CT、脳脊髄液検査など)
神経学的検査で異常の部位がある程度特定できた場合、より詳細な診断を行うために以下のような精密検査を実施することがあります。
・CT検査:骨構造の異常(頭蓋骨や脊椎など)を評価するのに適しています
・MRI検査:脳や脊髄の構造を詳細に描出し、炎症や腫瘍などを確認できます
・脳脊髄液検査:髄膜炎や脳炎などの炎症性疾患、感染症の有無を確認します
これらは全身麻酔下で行われることが多いため、愛犬の年齢や全身状態を踏まえて慎重に判断します。
専門病院への受診のタイミングと準備
通常、専門病院の受診はかかりつけ医からの紹介を経て行うのが一般的です。ただし、けいれんや意識障害などの緊急性が高い場合は、直接専門病院に連絡・ご相談いただくことも可能です。
受診前には以下を準備すると、診察がスムーズになります。
・症状が出たタイミングや経過の記録
・発作や異常行動の動画撮影
・既往歴や持病、現在服用している薬の情報
また、専門病院は地域によって数が限られているため、来院前にアクセス方法や駐車場の有無を確認しておくことをおすすめします。紹介状が必要な場合もありますので、事前にかかりつけ医と連携をとっておくと安心です。
まとめ
犬の神経症状は、さまざまな原因によって起こります。日頃から愛犬の様子をよく観察し、「いつもと違う」と感じたときは、ためらわずに動物病院にご相談ください。
また早期発見・早期治療を実現するには、専門家の的確な診断が欠かせません。実際にはかかりつけ医を受診する機会が多いかもしれませんが、診断・治療が難しいようであれば、当院のように神経病を専門とする動物病院への受診も検討しましょう。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
神経症状のことでお困りの際は、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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