愛犬の様子が急に変化? 緊急度の高い脳の病気を見逃さないために
2025/10/14
〈この記事の要約〉
以下のような症状が見られた場合、脳の病気の可能性があります。命に関わることもあるため、早めの受診が重要です。
飼い主様が気づくべき緊急サイン
・急に立ち上がれない
・呼んでも反応がない
・目が揺れる(眼振)
・意識がもうろうとしている
・けいれん発作が続く
・首をかしげて歩く、まっすぐ歩けない
疑われる脳の病気と特徴
疾患名 | 主な特徴 | 好発・背景 |
---|---|---|
てんかん | けいれん発作を繰り返す。原因不明の「特発性てんかん」も多い | 若齢〜成犬で発症例が多い |
脳梗塞 | 突然の歩行異常、意識障害 | 高齢犬に多い |
脳炎 | 発作や行動異常、免疫異常が原因 | パグや小型犬 |
熱中症による脳障害 | 高体温で脳が障害される。夏季に注意 | 真夏の散歩や高温多湿環境 |
中毒 | チョコレートやキシリトール摂取で発作・衰弱 | 誤食・誤飲時 |
この記事では、それぞれの病気の解説、緊急度の目安、自宅でできる対応や、当院で可能な診断・治療方法について詳しくご紹介します。
■目次
1.急に現れる“脳の異常”で考えられる病気
2.こんな症状が出たら病院へ
3.自宅でできる対応
4.病院での診断方法
5.治療方法とその後の経過
6.“季節の変わり目”は特に注意!
7.まとめ
急に現れる“脳の異常”で考えられる病気
犬の脳に急な異常が起きたときには、主に大脳や小脳などの中枢神経系の病気が疑われます。代表的なものは次のとおりです。
・てんかん
脳神経が異常に興奮し、けいれん発作が起こります。犬では原因不明の「特発性てんかん」がよく見られます。
・脳梗塞
脳の血管が詰まり、突然歩行異常や意識障害が出る病気です。
・脳炎
免疫の異常により脳に炎症が起こり、発作や行動異常を伴います。パグなどの小型犬で多く見られます。
・熱中症による脳障害
体温の急上昇で脳がダメージを受け、意識障害やふらつきが見られます。
・中毒
チョコレートやキシリトールなど犬に有害なものを摂取すると、発作や衰弱、興奮を引き起こすことがあります。
これらの病気はどれも珍しいわけではなく、どの犬にも起こりうるものです。そのため、普段から愛犬の様子をよく観察し、急な変化を見逃さないことが大切です。
こんな症状が出たら病院へ
「どんな症状なら病院に連れて行くべきか」と迷う飼い主様も多いでしょう。ここでは緊急度を3段階に分けてご紹介します。
緊急度 | 症状例 |
---|---|
今すぐ受診 | ・発作が5分以上続いている ・1日に複数回の発作が起きている ・意識が戻らない ・まったく立ち上がれない ・誤飲を目撃した |
当日中に受診 | ・意識はあるがまっすぐ歩けない ・首をかしげている ・目が小刻みに揺れている(眼振) ・嘔吐や下痢など全身の症状を伴っている |
経過観察可 | ・一度だけ発作が起き、その後は意識も元気も戻っている ・食欲や元気が普段通りにある |
ただし、一度落ち着いたように見えても自己判断は危険です。必ず動物病院で獣医師にご相談ください。
自宅でできる対応
急な発作や異変に直面すると、飼い主様は慌ててしまいがちですが、大切なのは「病院に行くまでに安全を守ること」と「診察に役立つ情報を残すこと」です。応急的に治すことはできませんが、以下の対応が愛犬の負担を減らし、スムーズな受診につながります。
・周囲の安全を確保する
発作中は家具や壁に体をぶつけてケガをする恐れがあります。周囲の物を片づけ、頭や体を守れるようにしてあげましょう。
・刺激を減らす
強い光や大きな音は症状を悪化させることがあります。できるだけ暗く静かな環境を整えてください。
・症状を記録する
発作の様子や持続時間をメモや動画に撮影しておくと、診察時に獣医師が状態を正確に把握する助けになります。
反対に、やってはいけないこともあるので、注意しましょう。
・強く体を揺さぶる
・水や食べ物を無理に口に入れる
・大声で名前を呼び続ける
病院での診断方法
病院では、まず身体検査や神経学的検査を行い、その後必要に応じて血液検査、画像検査、脳波検査などで原因を絞り込みます。
確定診断にはCTやMRIが必要になることもありますが、これらはすべての病院で実施できるわけではありません。
当院ではCT検査を院内で行えるほか、MRIについても提携施設と連携して検査が可能です。これにより、神経疾患に対して迅速で正確な診断を行う体制を整えています。
神経症状と、それに対する神経学的検査についてより詳しく知りたい方はこちら
MRI・CT検査でわかることについてより詳しく知りたい方はこちら
治療方法とその後の経過
診断結果に応じて、以下のような治療を行います。
・てんかん:抗てんかん薬で発作をコントロールする
・脳梗塞:酸素吸入や点滴で血流と脳機能をサポートする
・脳炎:免疫抑制剤やステロイドを使い炎症を抑える
・熱中症:体温管理、輸液、脳圧を下げる処置を行う
・中毒:催吐処置や解毒剤で体内から毒素を排出する
原因不明の発作であっても、早期に治療を開始することでコントロールできるケースは多くあります。早めの受診が何より大切です。
“季節の変わり目”は特に注意!
気温や気圧の急な変化は犬の体に大きなストレスを与えます。特に春から夏、夏から秋、冬から春といった季節の変わり目は、自律神経や血流のバランスが乱れやすく、脳や神経に負担がかかりやすい時期です。
日頃から体調の変化に注意し、快適な生活環境を整えてあげましょう。
まとめ
愛犬が突然、脳の異常を思わせる症状を見せたとき、飼い主様が感じる不安は計り知れません。
原因が特定できなくても、早期に治療を始めることで症状をコントロールし、愛犬のQOL(生活の質)を保つことは可能です。
もしものときに慌てないためにも、普段から愛犬の様子を観察し、気になる変化があれば早めにご相談ください。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
斜視についてお困りの際は、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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監修:とがさき動物病院 院長 灰井康佑|最終更新:2025-10-14
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