愛犬の目の向きがおかしい? 斜視の症状と神経学的検査について
2025/10/14
〈この記事の要約〉
以下のような症状が見られる場合、目の異常や脳・神経の病気が関係している可能性があります。生まれつきの斜視を除き、突然の発症は緊急性が高いこともあるため早めの受診が大切です。
飼い主が気づきやすいチェックポイント
・黒目の位置が左右で揃わない
・片方の目だけ外側や内側を向いている
・黒目の動きが鈍い、傾いて見える
・眼振(目が小刻みに揺れる)
・光を追う反応が鈍い
・まばたきの異常(極端に多い/少ない)
緊急度の目安
緊急度 | 症状例 |
---|---|
今すぐ受診 | 斜視に加えて発作・ふらつき・意識障害がある |
当日中に受診 | 眼振/歩行のふらつき/首の傾き/反応の低下 |
経過観察可 | 生まれつきの斜視で行動や健康に支障がない場合 |
この記事では、それぞれの病気についての詳しい解説に加え、緊急性の判断ポイント、自宅でできる注意点、動物病院での診断・治療法についてご紹介します。
■目次
1.目の異常でみられる具体的な症状とは?
2.「目の異常」から考えられる神経疾患とは?
3.神経学的検査ってどんなことをするの?
4.検査で異常がみつかった場合の対応と治療
5.再発リスクと予防のために知っておきたいこと
6.まとめ
目の異常でみられる具体的な症状とは?
斜視とは、本来なら正面を向いているはずの目が、内側や外側にずれてしまう状態です。黒目の位置が左右で揃わない、片方だけ動きが鈍い、黒目が傾いて見えるといった変化が特徴です。
生まれつきの斜視であれば、犬はその状態に慣れており、生活に支障が出ないこともあります。ところが、成犬になってから斜視が現れる場合は、脳や神経の異常が背景にある可能性が高いです。
斜視だけでなく、以下のような症状を伴うこともあります。
・まばたきの異常(回数が極端に減る/増える)
・眼振(がんしん:目が小刻みに揺れる)
・光を追うときの反応が鈍い
「目の異常」から考えられる神経疾患とは?
目の異常は「眼科的な病気」と誤解されがちですが、実際には脳神経の異常が目の動きとして現れることがあります。代表的な疾患には以下があります。
・前庭疾患
バランス感覚を司る器官の異常で、斜視や眼振、ふらつきが見られます。中耳炎など耳の病気が関係していることもあります。
・脳腫瘍
腫瘍の場所や大きさによって、斜視のほか歩行異常や発作など多様な症状が出ます。加齢とともに発症リスクが高まります。
・脳炎
特にパグやチワワなどの小型犬で多く、免疫の異常が原因とされます。炎症によって神経細胞が障害され、斜視やけいれん、行動異常が見られることがあります。
・水頭症
脳室に脳脊髄液がたまり、圧力で脳を圧迫する病気です。チワワやトイプードルに多く、斜視に加えて学習能力の低下やぼんやりするなどの症状が見られることもあります。
神経学的検査ってどんなことをするの?
目の異常が見られた場合、動物病院ではまず神経学的検査を行います。これは獣医神経病学会が示す評価方法に基づき、以下をチェックします。
・意識の状態
・歩様
・姿勢反応
・脊髄反射
・脳神経の反射・反応
・痛みや知覚の有無
痛みを伴わず、特別な機器も必要ないため、初期のスクリーニング検査として適しています。
もし異常が見つかった場合には、より詳細に調べるためCTやMRIなどの検査が必要になることもあります。これらの検査では脳や神経の構造を鮮明に映し出せるため、腫瘍や炎症の有無を特定するうえで欠かせません。
神経症状と、それに対する神経学的検査についてより詳しく知りたい方はこちら
MRI・CT検査でわかることについてより詳しく知りたい方はこちら
検査で異常がみつかった場合の対応と治療
検査の結果、異常や病気が確認された場合には、その種類や進行度に応じて適切な治療を行います。治療方針は一律ではなく、病気の原因や犬の体力、年齢、そして今後の生活の質(QOL)を総合的に考慮して決定します。
・内科的治療
炎症を抑える薬、免疫を調整する薬、発作を抑える薬などで症状の改善を目指します。
・外科的治療
腫瘍や構造的な異常が原因であれば、手術で取り除くことを検討します。
当院では、診断結果に基づいて治療の選択肢を明確にご説明し、メリットやリスクも丁寧にお伝えします。そのうえで飼い主様と相談しながら、愛犬にとって最も適切で無理のない治療方針を決定してまいります。
「完治を目指す治療」が最善の場合もあれば、「症状を和らげて快適に過ごすこと」を重視すべき場合もあります。愛犬が少しでも良くなることを目指しながら、同時に毎日の暮らしを安心して過ごせるよう、QOLにも配慮した治療をご提案いたします。
脳外科手術後のケアとリハビリについてより詳しく知りたい方はこちら
再発リスクと予防のために知っておきたいこと
腫瘍や脳炎などの神経疾患は、治療によって症状が改善しても、時間が経ってから再び症状が出る(再発する)可能性があります。そのため「治療が終わったら安心」ではなく、継続的なフォローアップがとても重要です。
・定期的な健康診断
半年〜1年に一度の受診が理想的です。診察だけでなく、血液検査や画像検査を行うことで、症状が出る前の段階で異常を見つけられる可能性があります。なお、持病がある場合は、3か月おきなどより短い間隔での健診が望ましいこともあります。主治医と相談し、愛犬に合った頻度を決めましょう。
・家庭での観察ポイント
日常生活での小さな変化を見逃さないことが、何よりも大切です。
目の動きの異常や眼振、ふらつき、呼びかけに対する反応の低下、性格の変化(元気がない・怒りっぽい)などは、神経症状のサインかもしれません。食欲や睡眠時間の変化、トイレの失敗なども記録しておきましょう。
飼い主様のちょっとした気づきと継続的な診察が、愛犬の健康寿命を大きく左右します。再発予防は「病院だけ」でも「家庭だけ」でも難しいため、二人三脚で取り組むことが重要です。
まとめ
犬の斜視は見た目だけの問題ではなく、脳や神経の病気が関わっている可能性があります。軽い異常に見えても、その裏には重い疾患が隠れている場合があるのです。
「気のせいかも」と様子を見るのではなく、早めに受診して原因を確認することが大切です。
気になる症状があれば、いつでもお気軽にご相談ください。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
斜視についてお困りの際は、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
埼玉県三郷市・吉川市・八潮市・越谷市で神経疾患・整形疾患の診療を受けるなら
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監修:とがさき動物病院 院長 灰井康佑|最終更新:2025-10-14
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