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犬の僧帽弁閉鎖不全症について│外科治療で根治が望めます

2023/07/28

僧帽弁閉鎖不全症(粘液腫様変性性僧帽弁疾患:MMVDとも呼びます)は、高齢の小型犬に頻発する心臓病です。通常の内科治療では病気の進行を遅らせ生活の質(QOL)を向上させることが目的となりますが、当院では外科治療に力を入れているので、つらい症状を根本から解決するお手伝いができることが強みです。
今回は僧帽弁閉鎖不全症について、よくみられる症状や当院での治療法などをご紹介します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断・治療・予防
4.ご家庭での注意点
5.まとめ

■原因

犬や猫の心臓は4つの部屋(右心室、左心室、右心房、左心房)に分かれていて、それぞれの間には逆流を防ぐための弁(開いたり閉じたりする仕切りのようなもの)がついています。
左心房と左心室の間にある僧帽弁がもろくなったり厚くなったりすると、うまく閉じなくなってしまいます。その結果、血液が逆流し僧帽弁閉鎖不全症の様々な症状が現れます
詳しい原因はわかっていませんが、遺伝や加齢(中~高齢に多い)が関与していると考えられています。特にキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルに頻発することが知られていますが、日本ではチワワ、マルチーズ、シー・ズー、ミニチュア・ダックスフンドなど、人気のある小型犬でよくみられます。ジャーマン・シェパード・ドッグなどの大型犬で発生することもありますが、通常は小型犬のものとくらべると軽度です。

■症状

初期には無症状ですが、病気が悪化するにつれて、乾いた咳が出る、疲れやすい、呼吸が荒いといった症状が現れます。重度になると、心不全や肺水腫といった病気に進行し、湿った咳や失神、不整脈などが現れ、やがて死につながってしまいます。

■診断・治療・予防

血液検査や聴診、エコー、レントゲンなどを実施して、総合的に診断します。僧帽弁閉鎖不全症と診断されたら、ご家庭の状況、犬の年齢や健康状態などに配慮して、治療方針を検討します。
僧帽弁閉鎖不全症は重症度によってA~Dのステージに分類されており、それぞれで治療法も異なります。一般的には、心不全治療薬や利尿薬を投与したり、食事療法や運動制限をしたりといった内科治療で対応しますが、これらは症状の緩和を目的としているため、根治にはつながりません
根治を目指す場合は、外科治療(手術)によって僧帽弁を修復する必要があります。手術時には体外循環を使用して、傷んでしまった弁を縫い縮めることと、腱索(心臓にある筋肉と弁をつなぐもの)を糸で修復することで、逆流する血液の量を大幅に軽減できます。獣医療業界ではまだまだ一般的ではなく、実施可能な施設は限られているのが現状ですが、当院では JACCT心臓血管外科チームの代表をお招きし、僧帽弁閉鎖不全の外科手術も対応しています。もちろんリスクも伴いますが、将来的にお薬の服用が必要なくなり、長く健康に過ごせる可能性も期待できます。

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なお、現在のところ明らかな予防法は知られていません。

■ご家庭での注意点

年齢を重ねるにつれて、咳が出る、自宅にいても苦しそう、呼吸が荒いといった症状がみられ、なかなか治まらない場合は一度、動物病院を受診していただき、検査を受けることをお勧めします。また、軽症で飼い主さんが判断できないこともあるため、健康診断で定期的にご来院いただくと、早期発見にもつながるでしょう。

■まとめ

僧帽弁閉鎖不全症は、内科治療では症状がこれ以上悪化しないようにするだけですが、外科治療では根治が望めます。他院にて僧帽弁閉鎖不全症と診断された場合でも、外科治療を選択肢の1つに入れておくことをお勧めします。

当院では2022年11月現在、全国で14名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
僧帽弁閉鎖不全症について気になることがあれば、当院へご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

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<参考文献>
Myxomatous mitral valve disease in dogs: does size matter? – PubMed (nih.gov)
ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs – PubMed (nih.gov)

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