【獣医師監修】愛犬の様子が急に変化? 脳炎・髄膜炎のサインと早期発見のポイント
2025/05/10
「いつもは元気いっぱいの愛犬が、なんだか元気がない…。」「呼びかけても反応が鈍くて心配。」
こうした異変を見つけると、飼い主様としてはとても不安になりますよね。実は、突然あらわれる行動の変化の裏には、脳炎や髄膜炎といった神経系の病気が潜んでいる可能性があります。こうした病気は進行が早い場合もあるため、早期発見・早期治療がとても大切です。
そこで今回は、犬の脳炎・髄膜炎に関する基本的な症状や原因、そして早期に気づくためのポイントをご紹介します。
■目次
1.脳炎・髄膜炎でみられる初期の行動変化
2.進行に伴って現れる特徴的な症状
3.脳炎・髄膜炎を引き起こす主な原因
4.すぐに受診が必要な危険なサイン
5.動物病院での診察について
6.動物病院での検査について
7.まとめ:早期発見のために大切なこと
脳炎・髄膜炎でみられる初期の行動変化
脳炎・髄膜炎の初期には、下記のような行動や性格の変化が現れることがあります。
・何となく元気がない、無気力になる
・普段は大人しいのに攻撃的になる
・名前を呼んでも反応が鈍い など
さらに、食欲の低下や睡眠パターンの変化、散歩中に歩くのを嫌がる、疲れやすいといった生活上の変化も見られる場合があります。これらの変化は、突然始まることが多いのが特徴です。
他の病気でも似た症状は起こりますが、脳炎や髄膜炎の場合は臓器の機能低下ではなく、性格そのものが変わってしまうように見える点が大きな特徴です。少しでも異変を感じたら、早めの受診を心がけましょう。
進行に伴って現れる特徴的な症状
病気が進むと、以下のようなはっきりとした症状が表れることがあります。
・歩行時のふらつき
・ぐるぐると回転するような行動
・首の痛み(触られるのを嫌がる、首を動かしたがらない)
・発熱 など
進行の速度は個体差があるため、急激に悪化する子もいれば、ゆっくりと進む場合もあります。また、パグなどの特定の犬種では、子犬の頃(パピー期)に発症リスクが高いタイプの脳炎があることが知られています。
脳炎・髄膜炎を引き起こす主な原因
原因は大きく「感染性」と「非感染性(免疫介在性)」の2種類に分けられます。
〈感染性〉
細菌やウイルスなどの病原体が脳や髄膜に侵入することで起こります。犬では特に犬ジステンパーウイルスがよく知られています。このウイルスは混合ワクチンに含まれているので、適切な時期にワクチンを接種することで予防が可能です。
〈非感染性(免疫介在性)〉
免疫の異常により、自分の組織を攻撃してしまうことで発症します。パグやマルチーズ、ポメラニアンなどの小型犬、かつ6歳未満の若い犬によく見られる傾向があります。原因が特定しづらい場合も多く、複数の要因が重なって炎症が起きていると考えられています。
また、中耳炎や鼻腔内の炎症から波及して、二次性脳炎を起こすこともあります。
すぐに受診が必要な危険なサイン
以下のような症状が見られた場合は、脳炎・髄膜炎が重度に進行している可能性が高いため、迷わず動物病院を受診しましょう。
・意識レベルが低下し、呼びかけに反応しない
・目を閉じたまま起き上がれない、ぐったりしている
・重度の歩行異常によって、立ち上がれない・歩けない
これらは急速に悪化するリスクがあるため、夜間や休日に対応している動物病院を事前に調べておくと安心です。
動物病院での診察について
はじめて受診するときは、年齢・犬種・生活環境・症状の経過などを詳しくうかがいます。その際、飼い主様が症状の経過記録や撮影した動画を準備しておくと、診断の助けになります。
また、他の神経疾患(てんかんや脳腫瘍など)との鑑別のため、以下のような検査を実施することもあります。
・MRI検査
脳内の病変の場所や範囲を画像化し、脳炎や腫瘍の有無を確認します。
・脳脊髄液検査
脳や脊髄を満たす液体を採取し、炎症が起こっているかを詳しく調べます。
動物病院での検査について
脳炎・髄膜炎の治療は、「感染性」か「非感染性(免疫介在性)」かによって変わります。
〈感染性の場合〉
抗菌薬などで病原体に対処します。ウイルスによるものの場合でも、二次感染を防ぐために抗菌薬が併用されることもあります。
〈非感染性(免疫介在性)の場合〉
体の“勘違いした免疫反応”を抑えるためにステロイドを中心とした免疫抑制剤を使います。副作用を軽減できるように配慮しながら、他の薬剤を組み合わせることもあります。
治療後は長期的な経過観察が重要となり、再発や症状の進行を防ぐためにも、定期的な通院が必要です。
まとめ:早期発見のために大切なこと
犬の脳炎・髄膜炎は、突然症状が出て急激に進行することもあるため、早期発見・早期治療がとても大切です。日頃から愛犬をよく観察し、いつもと違う様子に気づいたら、メモや動画で記録しておきましょう。そうした情報は診断の大きな助けになります。また、定期的に健康診断を受けることで、ご家庭では気づかない小さな異変を見つけることができます。
「なんだかいつもと違う」「元気がなくて心配」と感じたら、ぜひ動物病院へご相談ください。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
脳炎・髄膜炎のことでお困りの際は、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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