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愛犬の顔が歪んで見えるときは要注意|顔面神経麻痺の基礎知識と治療法

2025/07/25

「最近、うちの子の顔つきがなんだか変わったような…」「片方の目がうまく閉じられていないかも?」そんな違和感を覚えて、心配になったことはありませんか?

顔つきの変化は、加齢による筋力の低下や一時的な神経トラブルの可能性もありますが、中には「顔面神経麻痺」という病気が隠れていることもあります。この病気は、耳や脳の異常が関係していることが多く、放置すると状態が悪化してしまうこともあるため、早めの受診と適切な診断・治療がとても大切です。

今回は、犬の顔面神経麻痺の基礎知識や主な症状、診断・治療の進め方、ご家庭でできるケアについてご紹介します。

■目次
1.顔面神経麻痺ってどんな病気?
2.顔面神経麻痺の原因は?
3.診断と治療の進め方
4.顔面神経麻痺の治療法
5.ご家庭でできるケアと注意点
6.まとめ

 

顔面神経麻痺ってどんな病気?

犬の顔の筋肉は「顔面神経」と呼ばれる神経によってコントロールされています。
この神経が何らかの原因でダメージを受けると、顔の筋肉に力が入らなくなり、表情や顔の動きに左右差や異変が現れます。代表的な症状は以下のとおりです。

まばたきがしづらい
口元が下がる
表情が左右で異なる
よだれが垂れる
水を飲みづらそうにする
食事をこぼしてしまう

このように、見た目の変化だけでなく、食事や水分摂取など生活の質にも影響を及ぼす可能性があります。

 

顔面神経麻痺の原因は?

顔面神経麻痺の原因は、大きく中枢性(脳が原因)と末梢性(耳など末梢神経が原因)に分けられます。

・中枢性:脳炎や脳腫瘍など、脳そのものの異常が神経に影響を及ぼすケースです。

脳炎の症状や治療方法についてより詳しく知りたい方はこちら
脳腫瘍の症状や治療方法についてより詳しく知りたい方はこちら

・末梢性:中耳炎や内耳炎など、耳の奥にある神経が炎症を起こしているケースです。

また、犬では原因が特定できない「特発性」のケースも多いとされています。

そのため、すべての症例で原因が明らかになるとは限りませんが、可能な範囲で顔面神経のどの部位に異常があるかを調べることは、診断や今後の治療方針を考えるうえで重要な手がかりとなります。

 

診断と治療の進め方

適切な治療を進めるためには、獣医師による診察・検査が不可欠です。具体的には、以下のような手順で原因を探っていきます。

・問診・視診
飼い主様から日常の様子をお聞きし、顔の左右差や表情の動きなどを観察します。

・神経学的検査
反射や反応を確認し、どの神経に異常があるかを評価します。

これらの検査を行ったうえで、疑われる原因に応じて以下のような追加の検査を実施します。

・血液検査
炎症の有無や内臓の状態を数値で確認します。

・耳の検査
外耳・中耳・内耳に異常がないかをチェックします。

・画像検査(レントゲン、CT、MRI)
頭部や耳周囲、脳の構造を詳しく確認します。

 

顔面神経麻痺の治療法

顔面神経麻痺の治療は、原因となる病気によって大きく異なります。

〈炎症が原因の場合(中耳炎・内耳炎・脳炎など)〉

中耳炎や内耳炎といった細菌感染が原因であれば、抗生剤を中心とした治療が行われます。一方で、脳炎など免疫の異常によって引き起こされる炎症(免疫介在性疾患)が疑われる場合には、ステロイド(副腎皮質ホルモン)や免疫抑制剤を用いた治療が検討されます。

〈腫瘍や構造的異常が原因の場合〉

CTやMRIなどの画像検査で脳腫瘍や内耳の重度の異常が確認された場合、状況によっては外科手術や放射線治療を検討することもあります。ただし、すべての症例に適応できるわけではなく、手術の可否は腫瘍の位置や状態によって大きく異なります。

 

ご家庭でできるケアと注意点

顔面神経麻痺は、見た目の変化だけでなく、日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼします。ご家庭では、以下のようなケアを心がけましょう。

〈目のケア〉

顔面神経麻痺では、まぶたがうまく閉じられず、まばたきが減ってしまうことがあります。その結果、角膜が乾燥しやすくなり、目に傷がついたり、結膜炎を起こしたりするリスクが高まります。
こうしたトラブルを防ぐために、ご家庭では点眼薬で目を保護しましょう。ただし、市販の目薬やご家庭にある薬を自己判断で使用するのは避けてください。かえって症状を悪化させる恐れがあるため、必ず獣医師の診断のもとで適切な治療を行いましょう。

〈食事の工夫〉

口元の麻痺によって、フードをうまく食べられなかったり、こぼしてしまったりすることがあります。
こうした場合には、フードを柔らかくして飲み込みやすくしたり、器の高さを少し調整して食べやすい姿勢をサポートしたりすることで、負担を軽減できます。

また、水分摂取がしにくい子には、フードに水を加えるのも効果的です。

愛犬の状態に合わせて、無理なく食べられる方法を見つけていきましょう。

 

まとめ

顔面神経麻痺は、脳や耳などの異常が背景にあるケースも多く、早期発見と的確な診断・治療が重要な病気です。特に、「顔つきが変わった」「目をうまく閉じられない」といった変化に気づいたら、早めの受診をおすすめします。
その際、当院のように神経疾患を専門とする動物病院であれば、より専門的な検査や治療、リハビリサポートまで含めたケアが可能です。
何より大切なのは、飼い主様の「気づき」と「行動」です。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
顔面神経麻痺のことでお困りの際は、当院へご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

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