「急に目が見えない…」それ、脳腫瘍かもしれません|犬・猫の視力低下に潜む病気とは
2026/03/03
〈この記事の要約〉
「急に目が見えていない気がする」「いつもの部屋なのにぶつかるようになった」こうした変化が出たとき、原因は“年のせい”だけとは限りません。白内障や緑内障などの目の病気でも起こりますし、脳腫瘍・脳炎などの脳や神経の病気が関わって、視覚(見え方)に障害が出ている場合もあります。とくに急に始まった、短期間で悪化しているときは、早めに原因を確かめることが大切です。
受診を急いだほうがよいサインとしては、たとえば次のような変化が挙げられます。
・家具や壁にぶつかる/段差の前で止まる
・暗い場所を極端に嫌がる、動きたがらない
・目の前に手をかざしても反応が弱い
・ふらつく、同じ方向にぐるぐる回る、性格が急に変わる、けいれん発作がある など
ただし、見た目や行動だけで「目の問題」か「脳の問題」かを判断するのは難しいことが多いです。動物病院では、問診や身体検査に加えて、目の検査・神経の検査を行い、必要に応じてCTやMRIなどの画像検査で原因を探ります。
この記事では、犬や猫の視覚の特徴、見逃したくないサイン、目の病気と脳の病気の違い、動物病院での検査の流れ、治療やご家庭でできる工夫について紹介します。

■目次
1.犬と猫はどう見えている?人との「見え方」のちがい
2.見逃さないで! 視覚の異常サイン
3.目の問題? それとも脳の異常?
4.脳腫瘍による視覚障害とは?
5.動物病院での検査・診断の流れ
6.脳腫瘍の治療法と予後
7.見え方の変化に気づいたとき、家族にできること
8.まとめ
犬と猫はどう見えている?人との「見え方」のちがい
まずは、犬や猫の「見え方」の特徴を、人との違いも含めてお伝えします。
犬や猫は、人のように視覚だけに頼って生活しているわけではありません。周りの様子を把握するうえでいちばん頼りにしているのは嗅覚と聴覚で、どれくらいくっきり見えるかという意味での視覚の細かさは人ほどは発達していないといわれています。
色の感じ方も人とは少し異なります。
色を識別する「錐体(すいたい)」という細胞の種類が少ないため、私たちが赤・緑・青などをはっきり区別できるのに対し、犬や猫は赤色をうまく認識できず、やや灰色がかった色合いに見えていると考えられています。
一方で、暗い場所での見え方は、人よりずっと得意です。
目の奥には「タペタム」と呼ばれる反射板のような構造があり、入ってきた光を反射させて有効に使うことで、少ない光でもまわりを見分けられる仕組みになっています。
年齢による変化もあります。
シニア期になると、水晶体が徐々に硬くなり、ピントを合わせにくくなる「核硬化症」という状態がよく見られます。人でいう「老眼」に近いイメージで、白内障のように急に真っ白になって見えなくなるわけではありません。
なお、これらの見え方には人と同じように個体差があります。
もともとの視覚の敏感さや色の感じ方、年齢による変化の出方は一頭一頭ちがうため「異変に気づきにくい子がいる」ということも覚えておいていただけるとよいでしょう。
見逃さないで! 視覚の異常サイン
視覚に異常が出て見えにくくなると、日常生活の中で行動が少しずつ変わっていきます。代表的には次のような様子が見られます。
・歩いていて家具や壁にぶつかる
・階段や段差の上り下りを躊躇する
・目の前に手をかざしても反応が乏しい
・明るいところから暗いところへ移動しても、瞳孔がなかなか開かない(あるいはその逆も)
・呼びかけへの反応が遅くなり、音がする方向を頼りに動くように見える
こうした変化は、部屋の模様替えをしたときや夜間など、見えにくい状況で気づかれることが多いです。
「環境が変わったせいかな」「年齢のせいかな」と様子を見過ごしてしまわず、視覚の異常の可能性も考えてあげることが大切です。
目の問題? それとも脳の異常?
視覚の異常が起こる原因は大きく分けて、目そのものの問題と、脳・神経の問題があります。
〈目の病気〉
白内障、緑内障、網膜の異常(変性・萎縮・剥離)、角膜潰瘍 など
〈脳や神経の病気〉
視神経の圧迫、脳腫瘍(髄膜腫、脳下垂体腫瘍)、脳炎、てんかん など
脳腫瘍についてより詳しく知りたい方はこちら
脳炎についてより詳しく知りたい方はこちら
てんかんについてより詳しく知りたい方はこちら
ただし、症状や見た目だけでこれらを見分けるのはとても難しいため、動物病院での詳しい検査が必要になります。
脳腫瘍による視覚障害とは?
目で受け取った情報は視神経を通って脳へ伝わり、脳の「視覚野」で処理されます。
そのため、脳腫瘍が視神経を圧迫したり、脳の圧が上がって視覚に関わる部位へ影響が出たりすると、視覚に異常が現れることがあります。
さらに、脳の病気では見え方の異常だけでなく、次のような神経症状が同時に見られることがあります。
・ふらつき、まっすぐ歩けない
・旋回(同じ場所をぐるぐる回る)
・性格の変化
・てんかん発作 など
高齢の犬や猫では「年のせい」「認知機能の低下かも」と受け取られやすい症状です。しかし、急に始まった場合や、短期間で悪化する場合は特に注意が必要です。
動物病院での検査・診断の流れ
動物病院では、次のような流れに沿って検査・診断を進めていきます。
・問診
・身体検査
・眼科検査
・神経学的検査
これらの検査で脳や神経の病気が疑われた場合、必要に応じてMRIやCTなどの精密検査を追加する必要があります。画像検査により、腫瘍の有無、位置、周囲への影響などが評価しやすくなり、治療方針を立てるうえで重要な情報になります。
当院ではCT検査に対応しており、MRIが必要と判断される場合は提携施設をご案内しています。
原因がどんな病気であれ、早期診断ができれば予後を大きく改善できる可能性が高まります。
神経学的検査の流れについてより詳しく知りたい方はこちら
MRI・CT検査でわかることについてより詳しく知りたい方はこちら
脳腫瘍の治療法と予後
脳腫瘍の場合、腫瘍の種類や場所、大きさ、全身状態によって治療法が違ってきます。
・外科療法
手術によって腫瘍を取り除きます。転移がなく、アプローチできる場所にあれば選択できます。
・放射線療法
放射線を当て、腫瘍を小さくします。手術でアプローチできない場所にも適応できます。
・内科療法
抗てんかん薬やステロイド、免疫抑制剤などを継続的に投与し、発作や炎症をコントロールします。
また、全身に転移して根治が難しい、高齢で治療に耐えられない、飼い主様が積極的な治療を望まない、といった場合には、穏やかな生活を送るための緩和ケアをご提案しています。
見え方の変化に気づいたとき、家族にできること
治療と並行して、ご家庭の環境を整えることで、犬や猫が安心して暮らしやすくなります。
・部屋のレイアウトを大きく変えず、動線をシンプルに保つ
・食器、水飲み、トイレの場所を固定する
・段差を減らし、滑りやすい床にはマットを敷く
・家具の角にクッション材をつけ、ぶつかったときの衝撃を軽減する
・暗い場所では照明を補い、急に真っ暗にならないようにする
環境の整備は、転倒や衝突など二次的な事故の予防にもつながります。
まとめ
「最近家具にぶつかるようになった」「目が見えていなさそう」といった変化の裏には、目の病気だけでなく、脳腫瘍などの脳神経疾患が隠れていることがあります。年のせいと決めつけず、まずは検査で原因を確かめることが大切です。
当院では脳神経外科に力を入れており、CT検査などの精密検査にも対応可能です。少しでも「おかしいな」と感じたら、お早めにご相談ください。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
脳腫瘍についてお困りの際は、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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監修:とがさき動物病院 院長 灰井康佑|最終更新:2026-03-02
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