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犬・猫の重度歯周病|全身麻酔下の抜歯・口腔外科で行う治療とは
「口が臭うようになった」
「食べにくそうにしている」
「よだれが増えた」
愛犬や愛猫にこのような変化が見られると、「何が起きたのだろう」と不安になる飼い主様も多いのではないでしょうか。
こうした症状から考えられるのが「歯周病」です。
歯周病が進行すると、歯がぐらつくだけでなく、顔が腫れたり、くしゃみや鼻水が続いたりする場合もあります。
今回は、犬・猫の重度歯周病で起きていること、抜歯や口腔外科で行う処置、全身麻酔を検討するときの考え方について解説します。

犬・猫の歯周病が進行したときに見られる症状
犬や猫の歯周病は、歯肉や歯を支える組織に炎症が起こる病気です。
主な原因は、歯の表面に付着した歯垢(プラーク)中の細菌で、歯垢が蓄積することで歯肉に炎症が起こります。
初期には目立った症状がなく、口臭や歯肉の赤みがサインとなる場合があります。
歯周病が進むと、炎症が歯肉だけでなく、歯根膜や歯槽骨など歯を支えている組織にまで広がり、徐々に破壊されていきます。
これらは、歯周病が進行している可能性があるサインです。
・口臭が強くなった
・硬いものを避ける、食べこぼす、片側だけで噛む
・よだれが増える、よだれに血が混じる
・口元を触られるのを嫌がる
・歯がぐらつく、抜ける
・歯肉から出血している
・頬や目の下が腫れている
・くしゃみや鼻水が続く
症状の表れ方には個体差があり、複数の変化が同時に見られることもあります。
重度歯周病では何が起きている?
重度の歯周病では、歯と歯肉の間の「歯周ポケット」が深くなり、歯を支える骨が失われると、歯がぐらついたり抜けたりすることがあります。
また、歯周病の進行度は、歯の表面に付いている歯石の量だけでは判断できません。歯石が少なく見えても歯肉の下で病変が進んでいることがあります。反対に歯石が多くても、歯を残せるかどうかは見た目だけでは分かりません。
さらに重度になると、病変が歯の根の周囲から周辺組織へ及び、口の中だけでなく顔や鼻に症状が表れることがあります。
〈顔の腫れ〉
歯の根の周囲に炎症や膿がたまると、頬や目の下などが腫れることがあります。
口の中の病変が、顔の外側の変化として表れるケースです。
〈口腔鼻腔瘻〉
上顎の歯周病が進行すると、口と鼻の間に穴が開く「口腔鼻腔瘻」が生じることがあります。
その結果、くしゃみや鼻水など慢性的な鼻の症状につながります。
このような症状が見られる場合は、早めに動物病院で口腔内の状態を確認してもらうようにしましょう。
歯みがきや無麻酔の歯石取りだけでは対応が難しい理由
重度歯周病では、家庭でのケアだけで失われた歯周組織を元の状態に戻すのは難しく、痛みや感染源を取り除くために抜歯が必要になる場合があります。
また、無麻酔の歯石取りでは、歯の表面をきれいにできても、歯肉の下を確認したり、歯周ポケットや歯の根、顎の骨を詳しく調べたりすることは困難です。
さらに、犬や猫が動くと、器具で歯肉や舌を傷つける恐れもあります。
見た目を整えるケアと歯周病の検査・治療は目的が異なるため、口の状態に合った方法を選ぶことが大切です。
なお、麻酔の処置については、高齢の場合や持病がある場合も、事前検査で全身状態を確認し、麻酔のリスクと歯周病による痛みや感染を放置する負担を踏まえて治療方針を検討します。
口腔外科でできること
歯周病が初期の段階であれば、日常のデンタルケアを続けながら、必要に応じて動物病院で歯科処置を受け、進行を抑えるようにします。
詳しい評価や処置が必要な場合、動物への負担や処置中のリスクに配慮しながら行うため、原則として全身麻酔下で行います。
局所麻酔は痛みを抑えることはできますが、犬や猫の動きを止めたり、気道を確保したりすることはできません。
全身麻酔には、痛みや不安、恐怖を和らげることに加えて、次のような役割があります。
・犬や猫の不意な動きを防ぎ、器具による損傷をできるだけ避ける
・気道を確保し、処置中の水や汚れが気管へ入らないようにする
・歯周ポケットや歯肉の下まで詳しく確認する
一方で、全身麻酔には一定のリスクがあるため、事前に全身状態を確認し、その子に合わせて麻酔計画を立てることが大切です。
全身麻酔下の検査・抜歯
全身麻酔下では、状態に応じて次のような検査や治療を行います。
〈口腔内検査〉
歯肉の状態、歯のぐらつき、歯周ポケットの深さなどを1本ずつ調べ、残せる歯と抜歯を検討する歯を見極めます。
〈画像検査〉
必要に応じてレントゲンやCTなどの画像検査を選択し、外からは見えない歯根、歯槽骨、顎の骨の状態を確認します。使用する検査は、病変の位置や疑われる異常によって異なります。
〈歯石除去(スケーリング)と歯周ポケット内の清掃〉
歯肉より上の見える部分だけでなく、歯周ポケット内の歯垢や歯石も除去します。その後、歯の表面を研磨し、汚れが再び付着しにくい状態にします。
〈抜歯と口腔外科手術〉
ぐらつきのある歯や、支える骨が大きく失われた歯は、痛みや感染の原因を取り除くために抜歯を検討します。
歯の種類や根の形に応じて歯肉を切開し、周囲の骨を一部削って歯根を分割するなど口腔外科の手術が必要になるケースもあります。
病変が顎の骨まで広がっている場合や口腔鼻腔瘻がある場合は、感染した組織の除去や開口部を閉じる処置を行います。
また、口腔内にしこりが見つかった場合は、口腔内腫瘍の可能性も考慮し、組織検査や腫瘍切除などを検討します。
とがさき動物病院では、一般診療での口腔チェックから、画像検査、抜歯・口腔外科まで、その子の状態に応じた診療を行っています。
また、月に2回、歯科・口腔外科の診療に携わる外部の獣医師が来院し、手術指導を行う体制を整えています。
口臭、食べにくさ、よだれ、顔の腫れなどが気になる場合はお気軽にご相談ください。
抜歯後の経過
抜歯後は、口の痛みが軽減することで、食べ方や元気に改善が見られる場合があります。
ただし、回復の経過には個体差があり、処置直後は一時的に食欲が落ちたり、口元を気にしたりすることもあります。食事の形状、投薬、運動、歯みがきの再開時期は、退院時の指示に従ってください。
次のような様子があれば、処置を受けた動物病院へ相談しましょう。
・出血が続く
・顔の腫れが強くなる
・食事や水をほとんどとれない
・元気がなくなっている
傷が落ち着いた後は、残っている歯を守るために、無理のない範囲で歯みがきなどのホームケアを続けます。
また、定期的な口腔チェックは、残っている歯の歯周病の進行や、新たな口腔内の異常に早く気づくためにも役立ちます。
まとめ
重度歯周病では、目に見える歯石だけでなく、歯周ポケットの奥や歯を支える骨で病変が進んでいます。
全身麻酔下で詳しく評価することは、歯石除去だけでよいのか、抜歯や口腔外科が必要なのかの判断の助けとなります。
当院では2026年6月現在、全国で27名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、全身状態を踏まえた麻酔管理のもと、お口の健康から犬や猫の全身の健康維持を支える診療に取り組んでいます。
定期的な歯科検診から麻酔が必要な犬・猫の重度歯周病や抜歯、口腔外科についてお困りの際も、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
埼玉県三郷市・吉川市・八潮市・越谷市で神経疾患・整形疾患の診療を受けるなら
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監修:とがさき動物病院 院長 灰井康佑|最終更新:2026-09-11
