犬の視神経疾患と脳病変の関連性 | 早期発見のポイントと最新治療法
2025/04/10
目と脳の異常は、密接な関連があることをご存じでしょうか?
目から入った視覚情報を脳に伝える「視神経」は、実は脳の一部といえる存在です。そのため、視神経に異常がある場合は、単なる「目の病気」ではなく、脳の病変が背景に隠れている可能性もあります。
例えば、視神経に炎症や圧迫がみられた場合、背景には脳腫瘍や脳炎、または脳血管障害などが関与している可能性もあります。飼い主様が愛犬の目の異変に気づいた際には、単なる視力の問題だけでなく、脳の健康状態も視野に入れることが重要です。
今回は犬の視神経疾患と脳病変の関連性について、早期発見のポイントや最新の治療法について解説します。
■目次
1.犬の視神経疾患の主な症状と見分け方
2.視神経疾患と関連する主な脳病変
3.動物病院での診断方法と検査の流れ
4.最新の治療アプローチと回復の見込み
5.まとめ – 専門家への相談のタイミングと適切な医療機関の選び方
犬の視神経疾患の主な症状と見分け方
視神経に異常が生じた初期には、日常生活の中で次のような変化が見られます。
・物にぶつかる
・階段の上り下りが苦手になる
・瞳孔の大きさや反応が変わる
・目の奥が赤く見える など
特に片側だけ症状が出る、急激に視力が低下する、他の神経症状(ふらつき、けいれんなど)を伴うといった場合は、脳の異常が背景にある可能性を強く疑う必要があります。こうした症状がみられたら、自己判断せず、なるべく早く動物病院を受診してください。
視神経疾患と関連する主な脳病変
犬の視神経疾患の原因となる主な脳病変には、次のような病気が挙げられます。
・脳腫瘍
脳に発生した腫瘍が視神経を圧迫することで、視力低下や視野の異常が起こることがあります。特に中高齢の犬で見られるケースが多いです。
脳の腫瘍についてはこちらをご覧ください
・脳炎
脳に炎症が広がり、視神経にも影響が及ぶ場合があります。犬では非感染性(免疫介在性)の脳炎が比較的多く、パグなどの小型犬で、6歳未満の若い犬によくみられます。
脳炎についてはこちらをご覧ください
・脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
脳内の血流が悪くなったり出血したりすると、視神経を含む脳の一部がダメージを受けることがあります。突然の視力低下や神経症状が見られるのが特徴です。
脳梗塞についてはこちらをご覧ください
動物病院での診断方法と検査の流れ
目の異常で来院された際には、目だけでなく神経系の状態も含めて総合的に診断を進めます。
・神経眼科検査:視覚反応や瞬きの反射など、視神経と脳の機能を評価します。
・眼科検査:眼底(視神経乳頭)を観察し、炎症やうっ血の有無を確認します。
・画像診断:目の病変では超音波検査を行うこともあります。脳病変が疑わしい場合は、CTやMRIによって視神経と脳の関係を細かくチェックします。
・血液検査:炎症の有無や健康状態を確認します。
一般的な検査はそこまで時間がかからず無麻酔で行えますが、CTやMRI検査は通常、全身麻酔が必要となるため、前日夜からの絶食・直前の絶水をお願いすることもあります。
最新の治療アプローチと回復の見込み
視神経疾患の治療は、その原因となる脳病変によって異なります。
非感染性の脳炎では、ステロイド剤や免疫抑制剤を用いた薬物治療が基本です。症状の重さに応じて抗てんかん薬や脳圧を下げる薬を併用する場合もあります。脳梗塞に対しては、対症療法としての降圧剤や抗けいれん薬などが用いられます。
一方で、脳腫瘍が原因の場合には、まず外科的な摘出手術が検討されますが、腫瘍の位置や性質によっては実施が難しいこともあります。その際は放射線治療や抗がん剤治療が併用されます。
これらの病気は、いずれもそのままにしておくと悪化してしまう危険性があるので、早期発見・早期治療がカギになります。治療開始のタイミングが遅れると、病変が広がってしまうケースもあります。
また、動物病院での治療だけでなく、ご家庭でのケアも重要です。リハビリテーションを積極的に行う、愛犬の生活環境を整備する、といった飼い主様のケアによって、愛犬のQOL(生活の質)が維持されることにつながります。
まとめ – 専門家への相談のタイミングと適切な医療機関の選び方
犬の視神経疾患は、単なる目のトラブルだけでなく脳の病気が背景にあることも少なくありません。特に片側だけの視力低下や急激な変化、他の神経症状を伴う場合には、なるべく早く専門的な検査を受けることが鍵です。
また当院では、CTを完備しており、脳を含む高度な画像診断に対応できる体制を整えています。さらに、脳神経外科を得意とする獣医師が在籍しているため、脳の手術や難易度の高いケースにも対応が可能です。
もし「目の異変」が少しでも気になったら、まずはご相談ください。早期発見・早期治療が、愛犬の視力や健康を守る上で欠かせないステップとなります。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
視神経疾患や脳病変のことでお困りの際は、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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