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小型犬には要注意! 環軸椎不安定症の症状と治療法

2025/01/08

環軸椎不安定症とは、1番目の頸椎(首の骨)である環椎と2番目の頸椎である軸椎が正常に関節せず、不安定になることで生じる神経疾患です。環椎-軸椎の間には椎間板がないという特徴があり、通常は複数の靭帯でしっかり結合されています。しかし、時に小型犬では、生まれつきこの構造に異常を持つことがあり、環軸椎不安定症の発症リスクが高いことが知られています。
今回は環軸椎不安定症の原因、診断方法、最新の治療法について詳しく解説します。

■目次
1.環軸椎不安定症の発症リスクが高い犬種
2.環軸椎不安定症の原因を理解する
3.環軸椎不安定症の症状:早期発見のカギ
4.正確な診断へのステップ
5.環軸椎不安定症の最新治療法
6.環軸椎不安定症の日常のケア
7.まとめ:愛犬を環軸椎不安定症から守るために

 

環軸椎不安定症の発症リスクが高い犬種

環軸椎不安定症の好発犬種として、ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、チワワ、ヨークシャー・テリア、マルチーズ、ポメラニアンなどの小型犬種が挙げられます。

しかし、まれではありますが、大型犬でも発症する可能性があります。

 

環軸椎不安定症の原因を理解する

環軸椎不安定症の原因の多くは先天性であり、時に外傷性に発症します。

・先天性
若い小型犬でよくみられ、生まれつき環椎と軸椎の間に奇形があり、環軸関節の安定性が失われることで頸部の脊髄にダメージが加わり発症します。特定の犬種で多いことから、遺伝の関与も疑われています。

・外傷性
どの年齢・犬種でも発生する可能性があり、ケガや事故による環軸関節の損傷が原因です。

 

環軸椎不安定症の症状:早期発見のカギ

環軸椎不安定症の主な症状は、頸部痛と神経症状です。

首に痛みが生じるため、犬は元気や食欲がなくなり、頭を触られるのを嫌がったり、頭を下げた状態でいることが多くなったりします。また、ふらつきや転倒、歩行がぎこちないといった神経症状も現れます。

さらに重度の場合は、呼吸困難を引き起こして急死するケースもあり、緊急の対応が必要になります。こうした状態になる前に、愛犬に首の違和感や痛みがみられた時点で動物病院を受診しましょう。

 

正確な診断へのステップ

上記のような症状がみられたら、獣医師による身体検査や神経学的検査のほか、画像診断(レントゲン、CT、MRI検査)を実施して、総合的に判断します。

特に画像診断では、環椎と軸椎の構造的な異常を​​詳しく確認することができるので、診断するうえでとても重要になります。こうした検査をもとに、似たような症状を示す病気(頸部椎間板ヘルニア、脊髄空洞症、脊髄の腫瘍など)と区別する必要があります。

早期診断ができれば、症状の進行を抑える治療が可能になりますが、重度の神経障害が進行している場合には、予後が悪くなることがあります。
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環軸椎不安定症の最新治療法

環軸椎不安定症は、基本的には外科的治療(手術:環軸関節固定術)を最優先に考えます。この方法では、ワイヤーやスクリュー、ピンなどのインプラントを使用して環椎と軸椎を固定し、不安定な関節を安定化させます。特に、手足の麻痺が見られる場合や神経症状が進行している場合など、不安定性が大きい場合には早期の手術が必要です。

手術後は、リハビリを段階的に進めることで運動機能を回復させます。術後の経過には細心の注意が必要ですが、早期の治療で回復の見込みが大きく向上します。

一方、手術が困難な場合や、飼い主様が手術を望まない場合には、保存的治療を選択することもあります。保存的治療では、ギプスなどで首を固定して安定させることを目指しますが、これは根本的な解決にはならず、再発のリスクが高くなります。したがって、症状の進行具合や犬の状態に応じて最適な治療法を検討することが大切です。

 

環軸椎不安定症の日常のケア

環軸椎不安定症は首の骨の構造の異常によって起こるので、首に負担をかけないことが重要です。

特に首輪を強く締めると悪影響を及ぼしてしまうので、発症リスクが高い犬種ではハーネスの使用もご検討ください。あわせて、抱っこする際には、犬の体をできるだけ水平に保ち、首に過度な負担がかからないように気をつけましょう

また、この病気は若いころから発症することが多いため、子犬のうちから定期的な健康診断を受けて早期に異常を発見することが大切です。

 

まとめ:愛犬を環軸椎不安定症から守るために

環軸椎不安定症は若い小型犬に多い神経の病気で、運動機能の異常だけでなく呼吸困難などの致死的な症状を引き起こすこともあります。重症化する前に対処するには、早期発見・早期治療がとても大切です。さらに、治療後もかかりつけの動物病院を定期的に受診し、再発がないかを確認することも重要になります。特に小型犬の飼い主様は、普段から愛犬の行動に注意を払い、首を痛がる素振りや運動機能の異常がないかなど、よく観察してみることをお勧めします。

 

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犬と猫の脊髄空洞症について
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当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
環軸椎不安定症のことでお困りの際は、当院へご相談ください。

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