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犬の胸腰部椎間板ヘルニアの手術方法について

2024/09/10

以前の記事では、犬の胸腰部椎間板ヘルニアという病気について大まかにご説明しましたが、今回はその手術方法について詳しく解説します。犬の胸腰部椎間板ヘルニアには内科療法という選択肢もありますが、ヘルニアの重症度やタイプによっては早期の手術が必要なこともあります。また、その方法は病変の場所やハンセンⅠ型なのかⅡ型なのかによって異なるため、専門的な知識と経験が求められます。

犬のハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアについてはこちらの記事をご覧ください
犬のハンセンⅡ型胸腰部椎間板ヘルニアについてはこちらの記事をご覧ください

■目次
1.症状と手術が必要となるケース
2.手術方法の種類
3.各手術方法の比較
4.手術後のケアと注意点
5.術後の痛みと炎症のコントロール
6.まとめ

症状と手術が必要となるケース

犬の胸腰部椎間板ヘルニアは脊髄が圧迫されることで発症する神経の病気で、背中や腰の痛み、ふらつき、後肢の麻痺といった症状が現れます。また、その症状によって1~5のグレードに分類されています。

手術が必要になるケースは、一般的にグレード3以上の場合です。グレード2は「歩くことはできるが、力の入りが弱い」状態、グレード3は「歩くことができないが、力は入る」状態を指し、グレード4は「歩くことができず、力も入らないが痛みは感じる」状態です。
歩けるかどうか、痛みがわかるかどうかが手術の判断の決め手となります

 

手術方法の種類

犬の胸腰部椎間板ヘルニアには、以下のような手術方法があります。

〈片側椎弓切除術(ヘミラミネクトミー)〉

ハンセンⅠ型に適応されます。この手術では、背中側からメスを入れ、椎弓という背骨の一部を片側だけ切り取ることで脊髄までアプローチし、圧迫の原因となっている椎間板物質を取り除きます。

〈小範囲片側椎弓切除術(ミニヘミラミネクトミー)〉

さきほど解説した片側椎弓切除術の1つで、より切除する範囲を小さくした術式です。こちらもハンセンⅠ型に適応されます。片側椎弓切除術とくらべて、椎骨の不安定化を最小限にできるといわれています。

〈部分的側方椎体切除術(ラテラルパーシャルコルペクトミー)〉

ハンセンⅡ型に適応されます。椎体の一部を切除し、椎間板物質を摘出します。ハンセンⅡ型では椎間板物質がとても固く、上記2つの術式ではヘルニアを摘出できない場合が多いため本術式を行います。ドリルを使用し脊髄に近い骨を削っていくため、繊細な操作が必要になります。

 

各手術方法の比較

片側椎弓切除術
他の手術方法と比べて広範囲に切除するため犬の身体に対する侵襲が大きいですが、脊髄の状態を最もよく確認でき、広い範囲のヘルニアを摘出するのに適しています。

小範囲片側椎弓切除術
片側椎弓切除術と比べて切除する範囲が小さいため犬の身体に対する侵襲が小さいですが、狭い視野で手術を行うため難易度が高く、広い範囲のヘルニアを取り除くのには適しません。

部分的側方椎体切除術
片側椎弓切除術とくらべて切除する範囲が小さく、ハンセンⅡ型の胸腰部椎間板ヘルニアに対して治療成績がよいため、当院では積極的に採用しています。

 

手術後のケアと注意点

手術後には痛みが強くなければ積極的に運動させ、肢の機能回復を促すためにリハビリテーションを実施します。麻痺が残る場合には褥瘡の予防や排泄の補助が必要になることもあります。

 

術後の痛みと炎症のコントロール

術後は手術箇所の痛みや炎症を抑えるために、痛み止めのお薬を処方します。退院時にはほとんど痛みはありませんが、痛がる様子が長く続くようであれば、早めに動物病院を受診しましょう。

また、術後は早めにリハビリを始めることが、運動機能の回復に重要です。報告によっても違いはありますが、術後24時間から2週間以内にリハビリを開始し、2~6週間ほど続ける必要があります。それに加えてご自宅では、床に滑り止めマットを敷く、食事管理を徹底して太らせない、無理な運動を避けるといった対策が再発防止に効果的です。

 

まとめ

犬の胸腰部椎間板ヘルニアの手術方法として、片側椎弓切除術、小範囲片側椎弓切除術、部分的側方椎体切除術が挙げられます。それぞれに特徴があるので、どの方法が一番愛犬にとってよいのかを判断するには、検査結果を踏まえて獣医師とよく相談することが大切です。早期に発見し適切な治療を選択できれば、運動機能を維持できる可能性も広がるので、気になる様子があれば早めに動物病院を受診しましょう。

当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
胸腰部椎間板ヘルニアのことでお困りの際は、当院へご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

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<参考文献>
ACVIM consensus statement on diagnosis and management of acute canine thoracolumbar intervertebral disc extrusion – PMC (nih.gov)

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