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犬のハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアについて

2024/05/13

椎間板ヘルニアとは犬に多い神経の病気で、椎間板の構造物(髄核や線維輪)が変性し飛び出て脊髄が圧迫されることで発生します。その発症機序からハンセンⅠ型とハンセンⅡ型に分かれますが、中でもハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアはミニチュア・ダックスフンドで頻発することが知られています。その治療法は主に手術ですが、型によって術式が違ってくるため、詳しく検査を行って正確に診断することがポイントとなります。
今回は犬のハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアについて、基本的な情報とともに、治療法に焦点を当てて解説します。

犬のハンセンⅡ型胸腰部椎間板ヘルニアについてはこちらの記事をご覧ください

■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

◼️原因

脊髄は脊椎(背骨)に囲まれていて、各脊椎間には椎間板と呼ばれるクッションの役割を持つ構造物があります。椎間板は髄核とそれを包む線維輪で構成されており、ハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアは変性した髄核が線維輪を突き破り、変性した髄核が線維輪を突き破り脱出した髄核そのものが脊髄を圧迫することで発症します。
このパターンは先天性かつ急性に起こることがほとんどで、ミニチュア・ダックスフンドやビーグル、ウェルシュ・コーギーといった軟骨異栄養犬種で遺伝的に多いことが知られています。

なお、ハンセンⅡ型は線維輪が変性して脊髄を圧迫することで発症します。

◼️症状

症状は、発生部位やその進行度合いによって様々です。また、重症度は大きく5つの段階に区分されます。

グレード 症状
Grade1 痛みのみで麻痺を伴わない
Grade2 歩くことはできるが、力の入りが弱い
Grade3 歩くことができないが、力は入る
Grade4 歩くことができず、力も入らないが痛いのは分かる
Grade5 歩くことができず、痛みも感じない

 

胸腰部椎間板ヘルニアの場合、胸から腰にかけての脊髄が圧迫されるため背中や腰の痛みが出たり、麻痺のため逆に痛みを感じなくなったり歩行ができなくなります。また状態によっては、後肢が麻痺してふらついたり、歩行ができなくなったり、痛みを感じなくなったりします

急性の脊髄障害に伴い、脊髄軟化症という病態に進行し死に至ってしまう可能性もあります

◼️診断

背中の痛みや四肢の麻痺は、脊髄の腫瘍、髄膜炎、あるいは骨・関節の異常(骨折、脱臼など)といった他の病気による症状の可能性もあるため、順序を追って検査していきます。

まずは実際に歩く様子を観察するとともに、神経学的検査を実施して、どこに異常があるのかを推測します。
あわせて、X線検査や血液検査により全身の状態を確認します。

こうした検査でおおよその判断はできますが、正確に診断してその後の治療につなげるには、CTやMRIを追加で実施する必要があります。

◼️治療

症状が軽い場合は、内科療法を選択するケースもありますが、痛みが強かったり歩けなかったりするようであれば、手術によって椎骨の一部を取り除き、圧迫を軽減する処置が必要です。

その術式は病変の部位によって様々で、ハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアの場合には、背中側からアプローチする「片側椎弓切除術」が主に適応されます。この術式は、椎弓と呼ばれる背骨の一部を切り取ることで脊髄までアプローチし、脊髄を圧迫しているヘルニア物質を取り除くものです。切除の範囲を狭めた小範囲片側椎弓切除術、切除部位を少し変えた椎弓根切除術など術式のバリエーションが様々あります。どれを適応するかはヘルニアの場所や程度、範囲を見て決めます。

なお型によって術式が異なるので、レーザーによる減圧術を行うことがあります

型によって術式が異なるので、治療を滞りなく進めるためには、経験・知識が豊富な獣医師が検査を行い、正しい術式を選択することが求められます。

◼️予防法やご家庭での注意点

遺伝による影響が大きいため、好発犬種では歩き方や抱っこしたときの様子に注意してください。

また椎間板に負担をかけないため、床に滑り止めマットを敷く、食事管理を徹底する、激しい運動を避けるといった対策が有効です。

◼️まとめ

ハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアは様子をみているうちに進行してしまう可能性があるため、背中の痛みや四肢のふらつきといった症状が現れたら、早めに動物病院を受診しましょう。また正しく治療するためには、CTやMRIで背中から腰にかけてを詳しく調べ、最適な術式を選択することが重要になります。疑わしい症状がみられたら当院までお気軽にご相談ください。

犬の椎間板ヘルニアについてこちらもご覧ください

当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
椎間板ヘルニアのことでお困りの際は、当院へご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

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<参考文献>
ACVIM consensus statement on diagnosis and management of acute canine thoracolumbar intervertebral disc extrusion – PMC (nih.gov)

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