犬のハンセンⅡ型胸腰部椎間板ヘルニアについて┃軟骨異栄養犬種以外の犬に発症する
2024/05/07
以前の記事で、犬の胸腰部椎間板ヘルニアはハンセンⅠ型とハンセンⅡ型に分かれることをお伝えしました。どちらも脊髄が圧迫されるということは同じですが、その原因や好発犬種、治療法は異なるため、詳細な検査で、正しく診断することがポイントになります。
今回は犬のハンセンⅡ型胸腰部椎間板ヘルニアについて、基本的な情報とともに、型による違いに焦点を当てて解説します。
犬のハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアについてはこちらの記事をご覧ください
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
◼️原因
脊髄は脊椎(背骨)に囲まれていて、脊椎と脊椎の間には線維輪で包まれた髄核(椎間板)があります。ハンセンⅡ型胸腰部椎間板ヘルニアとは、加齢によって線維輪が徐々に変性し膨らむことで脊髄が圧迫され発症します。このパターンは後天性かつ慢性に起こることがほとんどで、軟骨異栄養犬(ミニチュア・ダックスフンドやペキニーズなど)以外の犬種に多いとされ、大型犬・小型犬を問わず発症します。
ハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアとともに、ハンセンⅡ型も比較的よく見られます。
なお、ハンセンⅠ型胸腰部椎間板ヘルニアは変性した髄核が線維輪を突き破り、脱出した髄核そのものが脊髄を圧迫することで発症します。
◼️症状
症状は、発生部位やその進行度合いによって異なります。ハンセンⅡ型胸腰部椎間板ヘルニアはゆっくりと進行するため、初期にはこれといった異常がみられないこともあります。
しかし、加齢に伴って病気が進行すると、背中に痛みを覚えたり、ふらついたり、後ろ足が麻痺して歩行できなくなったり、末期にはまったく立てなくなって痛みを感じなくなったりする可能性もあります。
ハンセンⅠ型と違って徐々に悪化するため、急な異変はありませんが、加齢による変化はそのままにしていても治ることはないので、早めに対処する必要があります。
◼️診断
ハンセンⅡ型もハンセンⅠ型と同様に診断していきます。
背中の痛みや歩き方の異常は、脊髄の腫瘍、髄膜炎、骨・関節の異常(骨折、脱臼など)など、他の病気による症状の可能性もあるので、慎重な検査によって判断することが大切になります。
まずは実際に歩く様子を観察するとともに、神経学的検査を実施して、どこに異常がみられるのかを推測します。
あわせて、X線検査により全身の状態を確認します。
こうした検査でおおよその判断はできますが、正確に診断してその後の治療につなげるには、CTやMRIを追加で実施する必要があります。
◼️治療
症状が軽ければ内科療法を選択するケースもありますが、痛みが強かったり歩けなかったりするようであれば、手術によって椎骨の一部を取り除き、圧迫を軽減する処置が必要です。
その術式は病変の部位によっても様々で、ハンセンⅡ型胸腰部椎間板ヘルニアの場合には、背中の左右病変側からアプローチする「部分椎体切除術」を行います。この術式は、椎弓(椎骨から左右方向に伸びている骨)の片側を小さい範囲で切り取ることで脊髄までアプローチし、脊髄を圧迫している椎間板物質を取り除くものです。
当院での経験上、この術式で治療すると治療成績がよいため、積極的に採用しています。
なお、ヘルニアが多発していて何か所も椎体切除をしなければならない時には、椎体固定を行い術後の背骨の不安定を予防することもあります。
◼️予防法やご家庭での注意点
ハンセンⅡ型では加齢による影響が大きく、軟骨異栄養犬以外のどの犬種でも起こりうるため、中高齢になったら歩き方などに注意しましょう。
また椎間板に負担をかけないために、床に滑り止めの敷物を用意する、食事管理を徹底する、激しい運動を避けるといった対策も効果的です。
◼️まとめ
ハンセンⅡ型胸腰部椎間板ヘルニアは加齢によって引き起こされる病気なので、「年のせいかな…」と誤解されやすいかもしれません。中高齢になって、歩き方がおぼつかなくなったりお散歩に行きたがらなくなったりしたら、まずは一度、動物病院で検査をして健康状態をチェックすることをお勧めします。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
椎間板ヘルニアのことでお困りの際は、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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