犬の前十字靭帯断裂について
2023/05/25
愛犬に、後肢をかばって歩いている、体重をかけることができず後肢を上げている、立ち上がったり座ったりすることが難しい、座るときに後肢を投げ出して座る、などの症状はありませんか？
このような症状がみられたら、前十字靭帯断裂の疑いがあります。
今回は、歩行や姿勢維持に障害をもたらす犬の前十字靭帯断裂について説明します。
原因
前十字靭帯は、後肢の膝関節内で膝より上の大腿骨と下の脛骨を支える役割をしています。
このため、前十字靭帯が損傷すると足に負重がかけられなくなり、起立や歩行などの運動機能に障害が生じます。
前十字靭帯の主な損傷原因は、靭帯の変性および外傷であることが知られています。
前十字靭帯の変性には、遺伝、免疫、形態、運動学的要因などが関与していると言われています。
変性し弱くなった靭帯に小さな損傷が重なり部分断裂を起こし、さらに悪化すると完全断裂に至ります。
外傷性断裂は、交通事故やアジリティなどのスポーツ競技中に靭帯に非常に強い力が加わり起こります。人では外傷性断裂が多いとされていますが、動物は靭帯の変性が大きな原因と考えられています。
症状
前十字靭帯断裂の主な症状は、歩様や姿勢の異常です。この症状は体重を足に負重できないことで生じます。
例えば、後肢をかばって歩いている、体重をかけることができず後肢を上げている、立ち上がったり座ったりすることが難しい、座るときに後肢を投げ出して座る、などが挙げられます。
この歩様や姿勢の異常は、運動および寝て起きた後に悪化することが特徴的です。
一般的に痛みの程度は重症度によって異なり、症状が重度の場合、歩行困難が生じたり、患部の脚に体重をかけることができなくなったりすることもあります。
痛みがある場合の多くは、長期間にわたって靭帯が少しずつ切れ膝関節が傷つくことが原因とされています。
診断方法
前十字靭帯断裂の診断は、視診、触診とX線検査にて行われます。
前十字靭帯の断裂程度によって診断の難易度が変わり、靭帯の一部が損傷した「部分断裂」では特に診断が難しくなります。
また、動物が緊張や痛みによって体をこわばらせた状態では正確な診断ができません。
正確な診断をするためには、動物はリラックスしストレスのかからない状態で検査をすることが重要です。
治療方法
前十字靭帯断裂の治療の第一選択は、外科的療法（手術）を行うことです。
靭帯の断裂により不安定となった膝関節を手術により安定化させます。
高齢であったり、何らかの基礎疾患により手術ができない場合には保存療法を行うこともあります。この場合は、安静や鎮痛剤、サプリメント、体重管理や自宅の環境整備などにより症状の安定化を図ります。
予防法や飼い主が気をつけるべき点
足にかかる負荷を減らすための体重管理は重要です。
また、前十字靭帯断裂を生じた犬の多くが、高い割合で数年以内に反対側の靭帯断裂を生じることが知られています。
患肢だけでなく反対側の足も守るために、足をかばっている様子がみられたら早めに動物病院を受診しましょう。
まとめ
前十字靭帯断裂は、様々な犬種でみられます。
主な症状は後肢をかばって歩く、体重をかけることができず後肢を上げる、立ち上がったり座ったりすることが難しい、後肢を投げ出して座ることなどがあります。
また、予防のためには足にかかる負荷を減らすため、適切な食事管理と適度な運動により愛犬の適切な体重管理をすることが重要です。
前十字靭帯断裂について、疑問点や気になることがあれば、当院までご相談ください。
当院では2022年11月現在、全国で14名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
前十字靭帯断裂について気になることがあれば、当院へご相談ください。
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