犬と猫の脊髄空洞症について
2024/03/22
脊髄空洞症とは、何らかの原因で脊髄内に液体を貯留する空洞ができてしまう病気で、知覚過敏や疼痛、麻痺などを伴います。多くは水頭症やキアリ様奇形、尾側後頭部奇形症候群(COMS)といった先天性の病気が原因で発生するため、それらの好発犬種では特に注意が必要です。
今回は犬や猫の脊髄空洞症について、原因や症状だけでなく、当院での検査・治療方針をご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
■原因
脊髄空洞症が発生する詳しい仕組みは完全には解明されていませんが、脳脊髄液の循環動態の変化が原因と考えられています。
例えば水頭症やキアリ様奇形、尾側後頭部奇形症候群(COMS)といった先天性疾患や脊髄損傷、脊髄腫瘍など後天的な要因により脳脊髄液の循環に異常を生じ、脊髄内に液体を貯留する空洞ができてしまうことが疑われています。
多くは先天性(生まれつき)の病気(水頭症、キアリ様奇形、尾側頸部奇形など)に伴って、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルでの発症が有名ですが、それ以外にもチワワやポメラニアン、ヨークシャーテリアといった小型犬でも多いといわれています。
■症状
空洞の部位と広がり具合により症状は様々ですが、知覚過敏や疼痛がみられることが多いです。
特に引っかき反射といって、首を引っかくような仕草が止まらなくなることがあります。こうした症状は皮膚の病気によるものと誤解されがちなので、注意が必要です。
それ以外にも、突然鳴く、動きたがらない、ふらつく、段差の昇り降りをためらう、触られるのを嫌がるなどの症状がみられることがあります。
さらに空洞が大きくなると症状が悪化し、手足の麻痺によって動けなくなったり、ひどくふらついたりします。
■診断
まずはご自宅での様子をお伺いし、他の病気である可能性がないかを確認するためにX線検査やCT検査を行い、脊髄空洞症であることを診断するためにはMRI検査を実施する必要があります。
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■治療
空洞が小さくて症状が軽度の場合は、内科療法をご提案します。
内科療法では薬を使って、空洞に溜まる水の生成を抑えたり、脊髄の炎症を抑えたりする治療などを行います。
内科療法で症状がコントロールできない、あるいは症状が重度の場合は、手術を行います。手術では、水が溜まっている部分にシャントチューブを入れて、溜まっている水を外に排出することで、症状の改善を図ります。
また、脊髄空洞症の原因となっている病気がわかる場合には、それらに対する治療も並行して行います。当院では神経・整形外科分野を専門とする獣医師が所属しているため、脊髄空洞症の原因となっている病気の治療にも対応が可能です。
■予防法やご家庭での注意点
脊髄空洞症の発生には多くの要因が関与しており、特定の予防法が確立されているわけではありません。しかし、犬や猫の健康を維持し、定期的な健康診断を受けることで、脊髄空洞症を引き起こす原因となる病気の早期発見や早期治療が可能となり、脊髄空洞症に関連するリスクを減少させることができます。
■まとめ
脊髄空洞症は先天性の病気によって引き起こされることが多いため、好発犬種では普段から様子をよく観察し異常が見つかった場合は速やかに獣医師の診察を受けることが重要です。また、検査や診断、治療にはより専門的な知識が必要となるため、神経・整形外科分野に力を入れている動物病院で受診することをお勧めします。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
脊髄空洞症について気になることがあれば、当院へご相談ください。
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<参考文献>
Syringomyelia: Current Concepts in Pathogenesis, Diagnosis, and Treatment – Rusbridge – 2006 – Journal of Veterinary Internal Medicine – Wiley Online Library
Behavioral and clinical signs of Chiari‐like malformation‐associated pain and syringomyelia in Cavalier King Charles spaniels – PMC (nih.gov)
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