犬の脾臓腫瘤について│良性悪性問わず注意が必要な腫瘤
2023/11/25
脾臓(ひぞう)とはお腹の中にある臓器の1つで、平らで細長い形が特徴的です。犬の脾臓にできる腫瘤(できもの)は、いろいろな種類に分けられますが、良性病変と悪性腫瘍の割合はおおよそ半々くらいといわれています。
悪性腫瘍の場合は脾臓腫瘤が大きくなり破裂してしまい、お腹の中で大量出血をしてしまう可能性が高いので、特に注意が必要です。ただし、破裂するまでは目立った症状がみられないことも多いため、定期的に動物病院を受診していただき、早期発見・早期治療に努めることが肝心です。
今回は犬の脾臓腫瘤について、その原因や症状、診断・治療法などをご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
◼︎原因
脾臓は免疫細胞や血液細胞をつくる役割を担っているため、血管肉腫、リンパ腫、組織球肉腫、肥満細胞腫など、それらの細胞に関する悪性腫瘍が発生します。また、他の臓器にできた腫瘍が脾臓に転移する場合もあります。
これらの腫瘍が発生する原因は詳しく解明されていませんが、高齢の犬(特に大型犬)に多いことが知られています。中でも頻繁に遭遇するのが血管肉腫という悪性腫瘍で、脾臓腫瘤の半分は血管肉腫ともいわれています。血管肉腫やその他の脾臓腫瘤は破裂するまで症状が現れないことが多く、知らぬ間に大型化してお腹の中で破裂してしまい、重篤な状態に陥る危険性があります。実際に当院でも、脾臓腫瘤が破裂し、ぐったりした状態で来院されるケースが多く見られます。
一方で、脾臓腫瘤が良性病変のケースもあります。よく遭遇するものとして、血腫、結節性過形成、脂肪腫などが知られています。良性病変は悪性腫瘍とくらべて成長するスピードが遅く、他の臓器への転移などもありませんが、悪性腫瘍と同様に大きくなって破裂する場合もあります。
◼︎症状
腫瘤が小さく破裂していないときには目立った症状が現れず、健康診断で偶然発見されることも多くあります。
しかし、良性・悪性ともに腫瘤が巨大化すると、お腹の中で腫瘤が破裂してしまい、大出血を招く危険性があります。脾臓には血液を貯蔵する役割もあるため、破裂してしまうと体内の循環血液量が急激に少なくなり、ショック症状(歯茎などの粘膜が白くなる、ぐったりする、呼吸が早くなるなど)が現れる場合もあります。
◼︎診断
まずはX線検査、超音波検査あるいはCT検査を実施して、脾臓の状態を確認します。これらの画像検査では腫瘤の大きさや位置などがわかりますが、良性と悪性の区別まではできないため、その後の治療方針を立てるには、手術後の病理検査で腫瘤の組織を観察する必要があります。
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◼︎治療
画像検査で脾臓に腫瘤がみつかった場合、基本的には手術を実施して、腫瘤ごと脾臓を全摘出します。良性・悪性を問わず、早期に発見して腫瘤が小さいうちに摘出できれば犬への負担は少なくなります。
しかし、腫瘤が大きくなって破裂しショック症状が現れた状態では、検査も手術も実施できないのでまずは輸液などでショック症状を改善させることが優先されます。このようなケースでは犬への負担が大きく、命を落とす危険性も高くなります。
また、悪性腫瘍の場合は予後が悪いことが多く、手術時に既にがん細胞が転移していたり周囲組織に浸潤していたりするので、術後に化学療法(抗がん剤治療)を実施することもあります。
◼︎予防法やご家庭での注意点
脾臓腫瘤は症状が現れないことが多いため、定期的に健康診断を受け早期発見・早期治療に努めましょう。普段は元気にしていても、腫瘤が破裂すると急にぐったりして、命を落としてしまう危険性もあります。そうなる前に発見して、対処することが肝心です。
◼︎まとめ
脾臓腫瘤は、定期的な健康診断により破裂する前に発見することが重要です。そして、各種画像所見や経過などから必要であれば巨大化、破裂を起こす前に手術を行い、病理検査により確定診断を得ることをお勧めします。また、急にぐったりする様子がみられたらお腹の中で大出血している可能性があるため、ご自宅で様子をみずにすぐに動物病院を受診しましょう。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
脾臓腫瘤について気になることがあれば、当院へご相談ください。
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<参考文献>
Splenomegaly in Dogs – Johnson – 1989 – Journal of Veterinary Internal Medicine – Wiley Online Library
Pathologic Factors Affecting Postsplenectomy Survival in Dogs – Spangler – 1997 – Journal of Veterinary Internal Medicine – Wiley Online Library
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