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コーギーの脊髄変性症(変性性脊髄症)の症状と治療法 | 飼い主が知っておくべき対策と予防法

2025/03/06

コーギーは短い脚と長い胴体、そして愛嬌たっぷりの表情で日本でも人気の高い犬種ですが、遺伝的にかかりやすい病気がいくつか存在します。その一つが「脊髄変性症」です。この病気は、背骨を通る脊髄という重要な神経が変性することで発症し、さまざまな神経症状を引き起こす進行性の病気です。現時点では根本的な治療法が見つかっていないため、飼い主様が正しい知識を持ち、生活の質(QOL)を保つためのケアを続けることが大切になります。
今回はコーギーの脊髄変性症の基本的な情報、症状、治療法、在宅ケアのポイント、さらに予防や繁殖に関する注意点について解説します。

■目次
1.コーギーの脊髄変性症とは? 発症の仕組みと特徴
2.見逃せない初期症状:早期発見のためのチェックポイント
3.診断から治療まで:獣医師に相談するタイミング
4.愛犬のQOLを維持するための在宅ケア
5.予防と対策:発症リスクを下げるために
6.遺伝子検査と繁殖に関する注意点
7.まとめ

 

コーギーの脊髄変性症とは? 発症の仕組みと特徴

脊髄変性症は、脊髄の神経が徐々に変性することで生じます。この病気は中高齢のコーギーに多く、10歳前後から初期症状が現れ始めるケースが一般的です。また、海外では大型犬(ジャーマン・シェパードやハスキーなど)での高い発症率が確認されています。

このように、特定の犬種に多く見られることや、SOD1遺伝子との関連性が指摘されていることから、遺伝的要因が関係していると考えられています。また、椎間板ヘルニアとは違い、痛みがない点が特徴です。そのため、気付かないうちに症状がゆっくりと進行し、ある日突然「立てない」「歩けない」といった深刻な状態になることもあります。
犬の椎間板ヘルニアについてはこちらをご覧ください

 

見逃せない初期症状:早期発見のためのチェックポイント

脊髄変性症の初期段階では、下記のような症状が見られることがあります。

足がふらついたり、もつれたりする
びっこをひく
腰を揺らすように歩く

数年かけて進行するにつれて、以下の症状が目立ち始めます。

後ろ足に力が入らず、立てなくなる
寝たきりになる
排尿・排便が自力でできなくなる
呼吸機能が低下し、呼吸が乱れる

こうした症状は他の神経病や骨・関節の病気とも似ているため、正確な診断が必要です。歩き方に違和感を覚えたら、早めに動物病院で診察を受けましょう。可能であれば、スマホなどで歩行の様子を動画で撮影しておくと、診断の参考になります

 

診断から治療まで:獣医師に相談するタイミング

足のふらつきやもつれが続く場合
後ろ足に極端な麻痺や力の入りにくさを感じる場合

上記のような症状が見られたら、迷わず動物病院へ連れていきましょう。動物病院では、歩行状態や神経学的検査を通じて、脊髄変性症をはじめとする神経疾患の可能性を探ります。さらに、CTやMRIなどの高度な画像検査を行うことで、他の病気(椎間板ヘルニア、脊椎腫瘍など)を除外します。
また、SOD1遺伝子の変異が関連しているとされるため、遺伝子検査を行うケースもあります。遺伝子検査で変異が確認できれば、脊髄変性症である可能性がさらに高まります。

〈治療の選択肢〉

残念ながら、現時点で脊髄変性症を完全に治す方法はみつかっていません。しかし、以下のような方法で症状を遅らせたり、愛犬のQOL(生活の質)を支えたりすることは可能です。

理学療法(リハビリテーション):足のマッサージや軽い運動を通じて筋力や運動機能を維持し、関節の拘縮を防ぎます。
抗酸化作用をもつサプリメントの投与:副作用がほとんどないので、ご家庭で手軽に与えられるメリットがあります。

 

愛犬のQOLを維持するための在宅ケア

脊髄変性症は進行性のため、在宅ケアが犬の生活の質を大きく左右します。症状の度合いに合わせ、以下のようなケアを検討してください。

リハビリテーション
飼い主様が足をゆっくり曲げ伸ばししてあげたり、サポートしながら短時間歩かせることで、筋力維持や関節の保護につなげます。

足先の保護
ふらつきがあると足先を引きずり、擦り傷ができやすくなります。犬用のブーツや保護パッドなどの活用も有効です。

食事管理
肥満による足腰への負担を軽減するため、獣医師と相談しながら適切なフードや給与量を調整します。

生活環境の整備
床に滑り止めマットを敷いたり、段差をなくしたりして、転倒や関節への負荷を減らしましょう。低反発マットレスも関節のサポートに役立ちます。

介護用品の活用
前足は動いていても後ろ足を使えない場合、車いすで補助してあげることで歩行をサポートできます。尿や便の失禁がある場合は、オムツの着用も効果的です。

 

予防と対策:発症リスクを下げるために

脊髄変性症は遺伝が関わる病気のため、完全に防ぐことは難しいとされています。ただし、以下のような日常的なケアは発症リスクや症状の進行を抑える手助けになります。

適度な運動や散歩で筋力を保つ
肥満を予防するための食事管理
定期的な健康診断で早期発見を目指す

 

遺伝子検査と繁殖に関する注意点

脊髄変性症はSOD1遺伝子の変異が関与しているとされ、遺伝子検査でその変異を調べることができます。検査自体はどのタイミングでも可能ですが、検査機関に検体を送付する必要があります。

〈繁殖を考える場合〉

変異遺伝子を保有する犬同士で繁殖すると、その子供も発症リスクが高まります。望まない遺伝子が広がらないよう、繁殖前に遺伝子検査を実施してリスクを把握することが大切です。

 

まとめ

コーギーは見た目の可愛らしさで多くの人に愛されている犬種ですが、脊髄変性症(変性性脊髄症)という進行性の神経疾患を発症しやすい傾向があります。残念ながら根本的な治療法は未確立ですが、早期発見・適切なリハビリ・介護用品の活用など、飼い主様の工夫次第で愛犬のQOLを高めることは可能です。また、責任ある繁殖を実現するためにも、愛犬の子供がほしい場合は事前に遺伝子検査を実施して、脊髄変性症の発症リスクを確かめることも大切です。

ご不安な点などあれば、お気軽に当院までご相談ください。

<参考文献>
Canine Degenerative Myelopathy – ScienceDirect

 

当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
脊髄変性症のことでお困りの際は、当院へご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

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