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マダニが媒介するSFTS|愛犬・愛猫を守るための予防策と注意点

2025/10/08

〈この記事の要約〉

近年話題の感染症「SFTS」は、マダニに咬まれることで動物にも人にも感染します。特に猫では致死率が高く、感染した飼い主様にも命に関わるケースがあります。完全室内飼いでも安心とは言えず、通年での予防が必要です。

マダニの特徴と感染リスク

・草むら・山林・公園・河川敷など身近に生息
・吸血の際にウイルスを媒介する
・春〜秋に活動が活発だが、冬でも完全に消えない
・感染動物の血液・体液から人にうつることもある
・室内飼育でも、人の衣服を介して持ち込まれる可能性あり

犬・猫・人でのSFTSの違い

種類 感染リスク 主な症状 重症化の傾向
外出する犬はリスクあり 無症状〜軽度(元気消失、発熱、食欲不振、嘔吐・下痢、黄疸) 高い(致死率約25~40%)
高リスク(特に外猫) 高熱、黄疸、食欲低下、嘔吐・下痢 非常に高い(致死率約60%)
屋外活動や飼育動物から感染 発熱、倦怠感、嘔吐、下痢、頭痛 高齢者で致死率20〜30%


この記事では、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)の症状や診断方法、治療の限界、そして予防のために飼い主様ができる具体的な対策までご紹介します。

■目次
1.SFTSとは
2.マダニの特徴と感染経路
3.ペットでみられるSFTSの症状
4.人でみられるSFTSの症状と重症化リスク
5.SFTSの診断と治療
6.予防方法
7.感染が疑われるときの対応
8.まとめ

 

SFTSとは

SFTSは「重症熱性血小板減少症候群」の略称で、SFTSウイルスが原因で発症します。このウイルスは「フタトゲチマダニ」などのマダニが媒介し、咬まれた際に唾液を通じてウイルスが体内に侵入します。

マダニは草むら・山林・散歩道など身近な場所に生息しているため、外出の多い犬や猫は感染リスクが高まります。特に自由に外を出歩く猫や、野良猫での発症例が多く報告されています

一方で、完全室内飼育のペットでも油断は禁物です。人の衣服に付着したマダニが室内に持ち込まれることもあるため、「室内だから安全」とは言い切れません。

 

マダニの特徴と感染経路

SFTSウイルスをもつマダニは、公園や河川敷、キャンプ場など身近な環境に広く生息しています。人や動物が草むらを通った際に体に取り付き、皮膚に口器を刺して吸血を始めることで感染が成立します。

さらに、感染した動物の血液や体液を介して人に感染することもあり、獣医療従事者や飼い主様が感染した事例も報告されています。

マダニの活動が最も盛んになるのは春から秋、特に初夏です。しかし冬でも完全に死滅するわけではないため、1年を通じた注意が必要です。

 

ペットでみられるSFTSの症状

SFTSの症状は犬と猫で異なります。

〈犬の場合〉

不顕性感染や軽症にとどまる場合もありますが、発症すると元気消失・発熱・食欲不振・嘔吐や下痢・黄疸などがみられ、命に関わることもあります。

〈猫の場合〉

発症すると重症化しやすく、特に高熱・元気や食欲の低下・嘔吐や下痢・黄疸が典型的な症状です。致死率は報告によって60%に達するともいわれており、極めて危険な感染症といえます。

 

人でみられるSFTSの症状と重症化リスク

人では感染から1~2週間後に、発熱、嘔吐や下痢、強い倦怠感、頭痛などが現れます。重症化すると出血傾向や意識障害に至ることもあり、致死率は20〜30%と報告されています。特に高齢者や持病のある方は重症化リスクが高いため注意が必要です。

このように、SFTSはペットだけでなく飼い主様や身の周りの方の命を奪ってしまう危険もあるので、日頃からのマダニ対策がとても重要です。

 

SFTSの診断と治療

SFTSを診断するには、さまざまな検査が必要になります。

・問診:屋外に出たか、予防薬を使用しているかなどを確認
・血液検査:血球の数や炎症の程度を評価
・遺伝子検査(PCR):血液などからSFTSウイルスの遺伝子を検出
・抗体検査:ウイルスに対する抗体を確認

残念ながら、現在のところSFTSに対する特効薬やワクチンは存在しません
そのため、治療は点滴や栄養補給などの対症療法が中心となります。症状を緩和しながら、体力の回復を待つしかないのが現状です。

 

予防方法

SFTSを防ぐ最も有効な方法は、マダニに咬まれないようにすることです。以下の対策を習慣にしましょう。

・予防薬の投与
マダニ対策の基本は予防薬です。チュアブルタイプやスポットオンタイプなどがあり、月に1回の投与で効果を持続させます。マダニは春から秋に活動が盛んになりますが、冬でも生存しているため、1年を通して継続的に予防することが重要です。特に屋外に出る犬や、自由に外に行く猫は必ず通年予防を行いましょう。

・お散歩ルートの工夫
草むらや茂みにはマダニが潜んでいることが多いため、散歩ではできるだけ避けましょう。公園や河川敷、キャンプ場など自然の多い場所では特に注意が必要です。どうしても通る場合は短時間にとどめ、帰宅後にしっかりチェックしましょう。

・外出後のチェックとケア
帰宅後はブラッシングや目視で被毛の中を確認してください。特に耳の内側・目の周り・首回り・脇・内股・指の間などはマダニがつきやすい場所です。体にマダニが付いているのを見つけたら、無理に引き抜かず、動物病院に相談してください。誤って口器だけ皮膚に残すと炎症や感染を引き起こすことがあります。

・生活環境の管理
庭やベランダに雑草が生い茂っているとマダニが潜む可能性があるため、定期的に草を刈り、清潔に保ちましょう。また、人の衣服に付いたマダニが室内に入り込むこともあるため、アウトドアや草むらに入ったあとは衣類や靴も確認してください

・飼い主自身の対策
飼い主様がマダニに咬まれないようにすることも重要です。長袖・長ズボン・帽子を着用し、肌の露出を避けることでリスクを減らせます。市販の防虫スプレーを衣類に使用するのも効果的です。飼い主様が感染源となってペットにウイルスを持ち込むリスクもあるため、人もペットも一緒に予防することが大切です。

このように「薬+環境+日常のチェック+飼い主の対策」を組み合わせることで、SFTSの感染リスクを大幅に下げることができます。

 

感染が疑われるときの対応

愛犬・愛猫に異変があり、SFTSの可能性が少しでもある場合は、必ず事前に動物病院へ連絡をしましょう

SFTSは人にも感染するため、院内での隔離対応が必要になることがあります。事前に連絡をいただければ、病院側で感染対策を整えたうえで安全に診療を行うことができます。

また、感染動物の体液や血液にもウイルスが含まれているため、飼い主様は口周りや排泄物、出血部分に直接触れないことが大切です。手袋やペットシーツを使い、できるだけ接触を避けて行動してください。

 

まとめ

SFTSは人にも動物にも感染しうる非常に危険な病気です。発生状況は年々報告が増えており、決して「遠い地域の病気」ではありません。

愛犬・愛猫を守ることは、家族全員の命を守ることにつながります。日常的な予防薬の使用と、草むらなどの環境対策を徹底し、少しでも異変があればすぐにご相談ください。

<参考文献>
Seroprevalence of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus in animals in Kagoshima Prefecture, Japan, and development of Gaussia luciferase immunoprecipitation system to detect specific IgG antibodies – ScienceDirect
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/12668-sfts-ra-0801.html

当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
SFTSについてお困りの際は、当院へご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

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