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高齢犬の神経症状┃加齢に伴う変化と要注意サイン

2025/10/08

〈この記事の要約〉

以下のような歩行異常が見られる場合、単なる加齢ではなく、神経や関節の病気の可能性があります。
「しばらく様子を見る」ことで悪化してしまうケースもあるため、早期の受診判断が大切です。

飼い主様が気づきたい要注意サイン

・ふらついてまっすぐ歩けない
・首をかしげている(斜頸)
・同じ場所をぐるぐる回る
・手足や顔にけいれんが出る
・呼びかけに対する反応が極端に鈍い

緊急度の目安

緊急度 症状例
_今すぐ受診_ _急に歩けなくなった/意識もうろう/けいれん/眼振/後ろ足に力が入らない
_当日中に受診_ _首の傾き/ふらつき/片足を引きずる/旋回行動
_経過観察可__ _呼びかけに鈍い・散歩が短いなど自然な加齢変化


この記事では、自然な老化と神経疾患の見分け方、緊急度の目安、動物病院での診断方法や病気別の治療法、シニア犬と暮らす上でのケアや生活環境の工夫について詳しくご紹介します。

■目次
1.高齢犬にみられる“加齢による自然な変化
2.神経疾患が隠れているかもしれない症状<
3.診断方法
4.神経疾患と診断された場合の治療とケア
5.シニア期の犬と暮らすうえで大切にしたいこと
6.まとめ

 

高齢犬にみられる“加齢による自然な変化”

人間と同じように、犬も年を重ねると運動機能や内臓機能が低下し、次のような変化が現れます。

・呼びかけに対する反応が鈍くなる
・寝ている時間が増える
・筋力が低下し、散歩の時間が短くなる
・関節がこわばり、段差の昇り降りや立ち上がりがゆっくりになる

これらの変化は病気によるものではなく、長く生きている中で自然に現れるものです。

 

神経疾患が隠れているかもしれない症状

一方で、以下のような症状は「年齢のせい」と見られがちですが、実際には神経疾患が原因の可能性もあります。

・ふらついてまっすぐ歩けない
・首をかしげる(斜頸)
・片足を引きずる
・同じ場所をぐるぐる回る(旋回)
・立ち上がれない、動けない
・反応が極端に鈍い

これらは、さきほどご紹介した“加齢による自然な変化”と似ている部分もあるので、見分けがつきにくいのが特徴です。特に、次のような症状が出ている場合は、命に関わる可能性があるため緊急に受診が必要です。

・急に歩けなくなった
・意識がもうろうとしている
・手足や顔にけいれんが出る
・目が上下左右に揺れる(眼振)
・後ろ足に力が入らない

 

診断方法

神経疾患は外から見ただけでは分からないことが多いため、複数の検査を組み合わせて診断します。

・神経学的検査
反射や反応の強さを調べ、どの神経のどの部分に異常があるのかを推測します。

・血液検査
炎症の有無や内臓機能をチェックします。

・画像検査
神経の病気を詳しく調べるには欠かせません。一般的にはレントゲンやエコーなどが利用されますが、さらに詳しい情報を得るためにはCTやMRIが必要になります。

CTやMRIは、脳や脊髄などの細かい部分を確認するために欠かせない検査です。レントゲンやエコーでは映らない異常を見つけることができます。ただし、専門的な設備が必要なため、すべての動物病院で受けられるわけではありません。

当院ではCT検査を院内で実施可能で、必要に応じてMRI検査については提携センターをご紹介する体制を整えています。そのため、飼い主様は大きな病院を探して何度も受診し直す必要がなく、スムーズに精密検査と診断を進めることができます。

MRI・CT検査でわかることについてより詳しく知りたい方はこちら

 

神経疾患と診断された場合の治療とケア

神経疾患といっても種類はさまざまで、治療のアプローチも異なります。代表的な病気とその治療法は以下の通りです。

・椎間板ヘルニア
脊髄が圧迫され、首・背中・腰の痛みや手足の麻痺が出る病気です。
軽症では薬による痛みのコントロールや安静・リハビリで改善を目指します。しかし、重症の場合は外科手術で圧迫を取り除かなければなりません。手術後はリハビリを継続することで、歩行機能が戻る可能性が高まります。
ご家庭では、滑りにくい床材を敷く、段差を減らすなどといった工夫が再発予防に役立ちます。

椎間板ヘルニアについてより詳しく知りたい方はこちら

・前庭疾患
平衡感覚をつかさどる部分に障害が起こり、斜頸や旋回、眼振が見られる病気です。耳の病気が原因であれば外科処置や薬で改善を図ります。一方で、原因が不明な「特発性前庭疾患」の場合は、数日〜数週間で自然に回復することもあります。その間は吐き気止めなどの対症療法で体を楽にし、加えて食事や水を取りやすいよう姿勢を工夫するなど、家庭でのサポートが重要です。

前庭疾患についてより詳しく知りたい方はこちら

・脳腫瘍
腫瘍の部位や大きさ、犬の体力によって治療方針は変わります。外科手術や放射線治療、抗がん剤治療を組み合わせることもあります。ただし、完治が難しいケースも少なくありません。その場合は発作や不安感をやわらげる対症療法を行い、生活の質を維持することが治療の目標となります。

脳腫瘍についてより詳しく知りたい方はこちら

 

シニア期の犬と暮らすうえで大切にしたいこと

シニア期になると、体のいろいろな箇所に不調がみられることが多くなり、若い頃と同じ生活というわけにはいかなくなります。特に神経疾患は進行がゆっくりで気づきにくいため、日常のケアや環境づくりがとても重要です。

・定期的な健康診断を受ける
年齢を重ねた犬では、半年〜1年ごとの健康診断が推奨されます。血液検査や神経学的検査を定期的に行うことで、早期発見につながります。

・毎日の観察と記録
散歩の様子、食欲、睡眠時間、仕草の変化をメモしておくと、病院で相談するときに役立ちます。動画を撮って獣医師に見せるのも有効です。

・生活環境の工夫
フローリングには滑り止めマットを敷き、階段やソファにはスロープを設置してあげましょう。関節や神経に負担がかからないような住環境づくりが、転倒やケガの予防につながります。

・介護や生活サポートを取り入れる
排泄が難しくなった場合にはペット用オムツやシーツを活用し、食事が取りにくい子には食器の高さを調整します。歩行補助用のハーネスや車いすといった介護用品を使うのも選択肢のひとつです。

・心のケアも大切にする
スキンシップや優しい声かけは安心感につながります。神経疾患を持つ子は不安を感じやすいため、飼い主様の存在が心の支えになります。

 

まとめ

愛犬のシニア期にみられるふらつきや歩き方の変化は、「年のせい」ではなく神経疾患が関わっている可能性もあります。まずは早期に原因を特定し、適切な治療やケアを始めることが、愛犬と一緒に過ごす穏やかな時間を長く守るカギです。

「少し気になるな」と思った段階で構いません。まずはお気軽に当院へご相談ください。

当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
高齢犬の神経疾患についてお困りの際は、当院へご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

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