犬の動脈管開存症について│遺伝が関係する病気…心雑音があれば要注意
2023/11/25
動脈管開存症(PDA)は犬の先天性心疾患のなかで最も発生頻度が高く、特徴的な心雑音が認められることで知られています。基本的には早期の外科治療が勧められますが、病気に気づかず進行してしまうと手術ができなくなってしまいます。無症状のこともあるため、若いころからの健康診断が早期発見にはとても重要です。
今回は犬の動脈管開存症について、原因や症状、治療法などをご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
◼️原因
動脈管は本来、赤ちゃんが母犬のお腹の中にいるときにだけ機能している血管で、通常は生後2~3日でその役目を終え閉鎖します。一方、生まれた後も動脈管がうまく閉じずに機能し続けてしまうことで、血液が大動脈から肺動脈へと短絡して流れ心臓に負担をかけることがあり、このような病気を動脈管開存症といいます。また、病態が進行すると血液の流れる方向が肺動脈から大動脈へと変化します。これをアイゼンメンジャー化、またはアイゼンメンジャー症候群といいます。
マルチーズ、トイプードル、ポメラニアンなどの小型犬によくみられることから、遺伝が関係すると考えられています。このように、先天的な病気のため若いころから発症することが特徴です。
◼️症状
短絡する血流量が少ない場合は無症状のことが多く、健康診断で聴診や超音波検査を行った際に偶然発見されることもあります。短絡血流量が多い場合は発育不良や呼吸が苦しそう、咳が出る、といった症状が現れます。病態が進行しアイゼンメンジャー化した場合は虚脱、失神、チアノーゼ(分離性チアノーゼといい、舌や口腔粘膜は正常であるが膣や包皮など心臓より後方の粘膜が青紫色になる)などの症状がみられます。
◼️診断
聴診では、連続性雑音(心臓の収縮から拡張までの間ずっと続く雑音)という特徴的な音が聴取されます。その他、心臓の超音波検査を実施して心臓の様子や短絡血流を確認するとともに、X線検査で血管や肺の状態、心臓の大きさなどを評価します。
◼️治療
検査で動脈管開存症が確認できれば、基本的には手術によって治療します。
手術では、動脈管に流れる血流を止めるために、カテーテルを用いて動脈管を塞ぐ器具を入れる方法、あるいは開胸して外から動脈管を結紮(糸で結ぶこと)する方法を採用しています。
ただし、進行してアイゼンメンジャー化してしまった場合は手術の適応外となり、症状の緩和を目的とした内科的な対症治療を行います。
◼️予防法やご家庭での注意点
先天性の病気ですが、初期であれば手術によって根治が望めるので、たとえ症状がなくても若齢のうちから定期的に健康診断を受けることが大切です。
特に好発犬種を飼育されている場合は、子犬のころから動物病院を受診し、もし心雑音があれば早めに心臓の超音波検査を行うことをお勧めします。
◼️まとめ
動脈管開存症は若い小型犬でよく遭遇する心臓の病気です。はじめは無症状のことも多いため、ご家庭で異変に気づいたときには手遅れになってしまう危険性もあります。早期に発見し手術ができれば、その後は健康に過ごすことができるので、まずは健康診断を受診しましょう。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
動脈管開存症について気になることがあれば、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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