犬と猫の口腔内腫瘍について
2024/03/22
動物では様々な腫瘍が発生しますが、その中でも比較的よく遭遇するのが口腔内腫瘍(口の中にできる腫瘍)です。口内の痛みや違和感のために食事がうまくできなくなることや、よだれが増える、口のにおいが変わる、できものが見えているなど飼い主様が異常に気付きやすい点も特徴的です。
今回は犬と猫の口腔内腫瘍について、発生しやすい種類やご自宅で注意すべき症状などを解説するとともに、当院での検査・治療法をご紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
■原因
口腔内腫瘍は、犬ではすべての腫瘍の約6%、猫では約3%を占めるともいわれています。その発生原因ははっきりとしていませんが、犬と猫で発生しやすい腫瘍の種類は判明しています。
犬では多い順に、悪性黒色腫(メラノーマ)、扁平上皮癌、線維肉腫、棘細胞性エナメル上皮腫がみられ、猫では60%以上が扁平上皮癌で、まれに線維肉腫が発生します。これらは悪性腫瘍(がん)のため、種類によっては他の臓器に転移することもあります。
一方でこれ以外に、口内で歯原生線維種やエナメル上皮腫といった良性腫瘍が発生することもあり、この場合には局所の治療が重要になります。
■症状
飼い主様の主訴として多いのが、腫れによる顔貌の変化やよだれの増加、出血、口臭、食べ方の変化といった症状です。
ただし、腫瘍が外から見えない場所にあったり、腫瘍ではなく炎症(歯周病など)によって痛みを感じたりしていることもあるので、見た目や症状だけでなく、後述する検査結果も踏まえて判断する必要があります。
さらに悪性腫瘍が他の臓器に転移していると、口だけでなく全身の状態が悪化している場合もあります。
■診断
口腔内腫瘍には良性のものと悪性のものがあるので、正確に診断することが重要です。
動物病院では口を開けて外観をよく見るとともに、組織を一部切除する検査(生検)を実施し、良性悪性の判断や腫瘍の種類を特定します。
あわせて、超音波検査やX線検査、CT検査で全身の状態をチェックし、腫瘍が転移していないか確認することもあります。
■治療
治療には、外科手術や放射線治療、抗がん剤治療などがあります。腫瘍の種類によって治療方針が異なりますが、手術による治療を実施することが多いです。
また当院では月に二度、歯科・口腔外科専門の先生が来院して手術指導を行っていることもあり、難しいケースにおいても高い専門性をもった治療をご提供できる場合もありますので、お困りの際はご相談ください。
術後は病理検査を外部機関に依頼し、腫瘍の種類を再度確認します。その結果から、腫瘍が余裕をもって取り切れているかを確認するとともに、放射線治療や抗がん剤治療などの補助治療が必要かどうかを検討します。
■予防法やご家庭での注意点
口腔内腫瘍が発生する原因は解明されていないため、予防は困難です。見た目では判断できなくても、食べるときや飲むときの異常に気づくこともあるため、愛犬愛猫の様子を観察し今回ご紹介したような症状がみられたら、早めに動物病院を受診しましょう。
また、獣医師による定期的な健康チェックが重要で、これにより口腔内の問題が早期に発見される可能性があります。
■まとめ
口腔内腫瘍は、食べる、飲み込むといった口の機能に影響を及ぼすため、たとえ良性であっても早急な対応が必要なこともあります。また、見た目では良性と悪性の区別ができないので、疑わしい場合は動物病院で検査を実施することをお勧めします。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
口腔内腫瘍について気になることがあれば、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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とがさき動物病院
<参考文献>
Clinicopathologic characterization of odontogenic tumors and focal fibrous hyperplasia in dogs: 152 cases (1995–2005) in: Journal of the American Veterinary Medical Association Volume 238 Issue 4 () (avma.org)
Cats, Cancer and Comparative Oncology – PMC (nih.gov)
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