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犬の神経疾患リハビリの基本|回復を妨げないために飼い主様が知っておきたいケアのコツ

2026/03/02

〈この記事の要約〉

犬の神経疾患(椎間板ヘルニアなど)の回復では、治療(手術・投薬)だけでなく、状態に合ったリハビリと環境づくりが重要です。
ただし、リハビリは「たくさん動かすほど早く治る」ものではなく、無理な負荷は痛みの悪化や回復の遅れにつながることがあります。

・リハビリの目的は、筋力維持/神経への適切な刺激/関節が固まるのを防ぐ/床ずれなど二次トラブル予防です。
・「歩けない=ずっと寝かせる」ではなく、状況により安全な範囲で小さな刺激が回復の土台になります。
・回復の見込みは損傷程度で変わり、評価の目安の一つが深部痛覚の有無です(評価は病院で)。
・家でのリハビリは、獣医師の指導のもとで「少しずつ・毎日」が基本です。
・避けたいのは、ジャンプ/階段/全力疾走/長距離散歩など強い負荷。
・体重管理、排泄サポート、ストレスケアも、回復を左右します。

〈自宅ケアの目安(やること・避けること)〉

目的 自宅でできること 避けたいこと
筋力低下を防ぐ 短時間の立位補助、数歩の歩行練習(指導の範囲で) 無理な歩行、長距離散歩
関節が固まるのを防ぐ 関節のゆっくり屈伸、体位変換 反動をつけた屈伸、強いストレッチ
神経への適切な刺激 足裏に刺激、優しいマッサージ 強い揉みほぐし・刺激
二次トラブル予防 皮膚の観察、床ずれ予防、清潔維持 同じ姿勢のまま放置
生活の安全性 滑り止めマット、段差対策、サークル管理 階段・ソファへのジャンプ
排泄のケア 尿量・回数・におい、皮膚の汚れ確認 排泄の我慢、濡れたまま放置

この記事では、椎間板ヘルニアなどの神経疾患を抱えた犬が少しでも健やかに暮らせるよう、回復を妨げないために知っておきたいポイントをQ&A形式で紹介します。

■目次
1.神経疾患のリハビリとは?
2.Q1:すぐ歩かせたほうがいいの?
3.Q2:ずっと寝かせていたら自然に治る?
4.Q3:後ろ足が動かないけど、まだ治る可能性は?
5.Q4:家でできるリハビリって何がある?
6.Q5:運動を控えたほうがいいって言われたけど?
7.Q6:その他に注意することは?
8.まとめ

 

神経疾患のリハビリとは?

リハビリが役立つ神経疾患には、椎間板ヘルニア、変性性脊髄症、脊髄梗塞などがあります。これらは脊髄などの中枢神経がダメージを受け、後ろ足の麻痺やふらつき、踏ん張れないといった症状が出やすい病気です。

自然治癒だけで完全に元通りになるケースは限られており、運動機能を回復させるには「時間」「適切な刺激」「継続的なケア」の3つが重要です。特に治療後(手術後、または投薬治療で痛みや炎症が落ち着いてきた時期)は、回復の“伸びしろ”が大きい期間でもあります。

手術は神経を圧迫する原因の除去を目指し、お薬は痛みや炎症の緩和を担います。一方でリハビリは、筋力の維持、神経への刺激と再教育、関節拘縮(関節が固まること)や二次的なトラブルの予防を目的とします。
そのため、治療とリハビリを組み合わせることで、回復をより現実的に目指しやすくなります

椎間板ヘルニアについてより詳しく知りたい方はこちら
変性性脊髄症についてより詳しく知りたい方はこちら

 

Q1:すぐ歩かせたほうがいいの?

「歩けない=安静」と思いがちですが、状態によっては軽い刺激を加えることが回復の第一歩になります。ただし、いきなり立たせたり歩かせたりするのは危険です。

術後や治療初期の段階では、痛みや神経の不安定さが残っている場合もあるため、無理な運動は避けましょう。まずは、短時間のスタンディング補助や足先の軽いマッサージから始めることが一般的です。

状態や疾患の種類、進行度によって必要なリハビリは異なるため、自己判断で進めず、獣医師の評価をもとに計画的に行いましょう。

 

Q2:ずっと寝かせていたら自然に治る?

長期間寝たきりでいると、筋肉が衰える「廃用性筋萎縮」や関節の拘縮、褥瘡(床ずれ)などのリスクが高まります。ただし、安静がダメというわけではなく、手術直後などの痛みが残る状況では、短期間の安静を最優先する場合もあります

無理のない範囲で、以下のようなケアから始めましょう。

体位をこまめに変える(2〜3時間おきが目安)
関節の軽い屈伸で可動域を維持
皮膚や足先の血色・感覚のチェック

こうした小さな刺激の積み重ねが、後のリハビリの効果を高める土台になります。

 

Q3:後ろ足が動かないけど、まだ治る可能性は?

回復の可能性は、神経の損傷の程度によって変わります。目安の一つとして重要なのが「深部痛覚」の有無です。足先を刺激した際に、痛みを感じて引っ込める、嫌がる反応がある場合、深部痛覚が残っている可能性があり、回復の見込みは比較的期待できます(評価は安全面の観点から病院で行うのが基本です)。

「歩く」という動作は、脳からの指令が脊髄を通って末梢神経へ伝わり、筋肉が動くことで成立します。歩行の回復には、この連携を“再学習”していく過程が必要です。リハビリは短期間で劇的に変わるものではありませんが、適切な刺激を継続することで、少しずつ動きが変化することがあります。焦らず、段階的なステップアップを意識しましょう。

 

Q4:家でできるリハビリって何がある?

ご家庭でできるリハビリの利点は、日々の生活の中で「少しずつ」「継続的に」取り組める点にあります。ただし、方法や強さは個体差が大きいため、必ず獣医師の指導のもとで行ってください。

・マッサージ:足先をやさしく揉んで血流を促す
・関節屈伸:足をゆっくり曲げ伸ばして可動域を維持
・スタンディング補助:体を支えて立たせ、足裏に刺激を与える
・温罨法:ぬるま湯で絞ったタオルなどを患部にあて、温める

どの方法も、嫌がる・痛がるときは中止し、無理のない範囲で継続することが重要です。また、日々の様子を記録することで、次回の診察にも役立ちます。

 

Q5:運動を控えたほうがいいって言われたけど?

「運動制限」と言われると、運動を完全にゼロにするイメージを持たれることがあります。しかし、回復期に大切なのは“刺激をコントロールすること”です。

〈避けたい動き〉

・階段の昇降
・ジャンプ
・全力疾走
・長距離の散歩

〈おすすめの動き〉

室内で数歩だけ歩く
立たせた状態で軽く足踏み
補助具を使った歩行練習

また、運動の効果を引き出すには環境づくりも欠かせません。フローリングには滑りにくいマットを敷き、段差を減らし、足が踏ん張れる環境を整えておきましょう

 

Q6:その他に注意することは?

リハビリの効果を高め、合併症を防ぐために、次の点も押さえておきましょう。

・体重管理
体重が増えると関節への負担が増し、動きづらさや痛みにつながることがあります。フード量やおやつの内容は、治療の進み具合に合わせて見直すことが大切です。

・排泄のサポート
重度の神経疾患では排尿・排便がうまくできず、膀胱炎や皮膚トラブルにつながることがあります。尿の量や回数、におい、皮膚の赤みなどをチェックし、異変があれば早めにご相談ください。

・精神的ケア
動けない状態は犬にとって大きなストレスになります。できる範囲で生活リズムを整え、安心できる声かけやスキンシップを続けることが、リハビリへの意欲につながることもあります。
また、飼い主様ご自身の心身のケアも大切です。疲れや不安があるときは、遠慮なく病院へ相談してください

 

まとめ

神経疾患によって愛犬がうまく立てない・歩けない状態になると、飼い主様が不安や焦りを感じるのは自然なことです。リハビリは長期戦になることもありますが、正しいケアを日々積み重ねることが機能回復につながります。
当院では、状態の評価に基づいて、その子に合ったリハビリ計画をご提案します。ご家庭での取り組み方も含めて一緒に整理しながら進めていきますので、気になることがあればお気軽にご相談ください。

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当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
神経疾患リハビリについてお困りの際は、当院へご相談ください。

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監修:とがさき動物病院 院長 灰井康佑|最終更新:2026-03-03

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