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犬の頸部椎間板ヘルニアの手術法について

2024/09/17

以前の記事では、犬の頸部椎間板ヘルニアという病気について大まかにご説明しましたが、今回はその手術方法を詳しく解説します。犬の頸部椎間板ヘルニアには内科療法という選択肢もありますが、強い痛みのために早期の手術が必要なことも多くあります。また、その方法は病変の場所やヘルニアの数によっても違ってくるので、より専門的な知識・経験が求められます。

犬の椎間板ヘルニアについてはこちらの記事をご覧ください

■目次
1.症状と手術が必要になるケース
2.手術方法の種類
3.各手術方法の比較
4.手術後のケアと注意点
5.術後の痛みと炎症のコントロール
6.まとめ

 

症状と手術が必要になるケース

犬の頸部椎間板ヘルニアは脊髄が圧迫されることで発症する神経の病気で、首の痛みによって、首を触られることを嫌がる、頭を下げたまま視線だけ上に向けるなどの症状が現れます。また、その症状の重症度によって1〜3のグレードに分けられます。

胸腰部椎間板ヘルニアと同様に、頸部椎間板ヘルニアにおいてもグレードだけで、手術の判断をすることはできません。グレード1でも内科療法で症状が改善しない場合があるため、もともとの症状や治療への反応を観察しながら柔軟に対応する必要があります

犬の胸腰部椎間板ヘルニアの手術方法についてはこちらの記事をご覧ください

 

手術方法の種類

犬の頸部椎間板ヘルニアには、以下のような手術方法があります。

〈腹側減圧術(ベントラルスロット)〉


首の腹側からメスを入れ、頸椎にスロット(穴)を開け、その穴からヘルニアを摘出することで脊髄への圧迫を軽減します。明らかに1か所で強い圧迫がある場合には、この術式が一番優先される選択肢となります。

〈背側椎弓切除術(ドーサルラミネクトミー)〉

背中側からメスを入れ、椎骨の一部(椎弓と棘突起)を取り除くことで脊髄への圧迫を軽減します。ヘルニアが1か所ではなく多発している場合に検討します。

〈片側椎弓切除術(ヘミラミネクトミー)〉

背側もしくは横からメスを入れ、関節突起と椎弓の一部を切り取ることで脊髄までアプローチし、圧迫の原因となっている椎間板物質を取り除きます。椎間板物質が横に飛び出ている場合に適応されます。

 

各手術方法の比較

腹側減圧術
血管や神経、気管といった重要組織を傷つけなければ、長期的な予後は良好です。

背側椎弓切除術
腹側減圧術よりも広い穴をあけるため、犬の身体に対する侵襲性が大きくなる一方で、手術時の視野が広く確保でき、多発するヘルニアに対する予後の良い手術法です。

片側椎弓切除術
上記2つの手術法では対応できない片側のヘルニアに適応されます。手術時の視野が狭く出血を伴いやすいため、手術には熟練を要します。

 

手術後のケアと注意点

腹側減圧術や片側椎弓切除術を適用した場合には、術後早期に疼痛や麻痺が改善されることも多いため、犬の状態が許せば手術翌日にはリハビリテーションを開始します。

背側椎弓切除術を適用した場合には、身体の侵襲が大きいため無理はせず定期的な体位変換や手足のマッサージなどから始め、犬の状態が落ち着いてきたところで姿勢保持や立位のリハビリテーションを開始します。

 

術後の痛みと炎症のコントロール

術後は手術箇所に痛みや炎症があるため、痛み止めのお薬を処方します。だんだんと痛みは引いてきますが、痛がる様子が長く続くようであれば、早めに動物病院を受診しましょう。

また、術後は早めにリハビリを始めることが、運動機能の回復に重要です。報告によっても違いはありますが、術後24時間から2週間以内にリハビリを開始し、2~6週間ほど続ける必要があります。それに加えてご自宅では、床に滑り止めマットを敷く、食事管理を徹底して太らせない、無理な運動を避けるといった対策が再発防止や他の病気の予防に効果的です。

 

まとめ

犬の頸部椎間板ヘルニアの手術方法として、腹側減圧術、背側椎弓切除術、片側椎弓切除術が挙げられます。それぞれに特徴があるので、どの方法が一番愛犬にとってよいのかを判断するには、検査結果を踏まえて獣医師とよく相談することが大切になります。その点、当院では椎間板ヘルニアの手術に関して豊富な知識と実績があり、病態に応じて的確な術式を選択できるのが強みです。病態に合っていない手術方法で治療するとうまくいかないケースが多いので、他院で改善がみられない場合はぜひ当院までご相談ください。

 

当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
頸部椎間板ヘルニアのことでお困りの際は、当院へご相談ください。

■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください

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