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犬のウォブラー症候群について│後ろ足から症状が現れる頸部神経の病気

2024/03/01

ウォブラー症候群(Caudal Cervical stenotic myelopathy)は大型犬にみられる神経病で、首から胸にかけての背骨(椎骨)の一部や周辺組織が脊髄を圧迫することで、首の痛みや後ろ足の開脚・ふらつきなど、特徴的な症状が現れます。治療は、痛み止めなどによる対症療法と手術に分けられ、手術では症状の改善がより期待できます。
今回は犬のウォブラー症候群について、原因や症状などとともに、当院での具体的な手術方法をご紹介します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

◼️原因

ウォブラー症候群は、中~高齢のドーベルマン、あるいは若~中齢のワイマラナー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、グレート・デーンなどに頻発します。しかし当院では、チワワやヨークシャー・テリアなどの小型犬で同様の病態を発症するケースも経験しています。

詳しい発生原因はわかっていませんが、遺伝や体の構造が関係しているのではないかと考えられています。いずれにせよ、頚椎(首の骨)や胸椎(胸の背骨)の形態異常、あるいは椎体周囲の靭帯や関節包などの組織の肥厚によって脊柱管が狭窄し、脊髄が圧迫されることで発症します。

◼️症状

ウォブラー症候群は首の神経の病気ですが、後ろ足から症状が現れる特徴があります。
発症初期には後ろ足の動きが変化し、開脚したままになったり、足に力が入らなくなりふらついたりします。前足と後ろ足の歩幅や足の運びがちぐはぐになる、Two-engine-gaitという特徴的な歩様がみられることもあります。

徐々に悪化していくと、後ろ足だけでなく前足にまで影響し、麻痺して歩行できなくなる場合もあります。また、痛みのため首をまっすぐにしたまま頭を上げようとしなくなります。

◼️診断

まずは歩く様子や姿勢などを確認し、神経学的検査で脊椎のどこに異常があるのかを確かめます
ウォブラー症候群を含む脊椎の病気が疑われる場合、確定診断を下すにはMRI検査やCT検査などの高度な画像検査が必要になります。同じような症状でも、股関節形成不全症などの整形外科疾患や他の神経疾患である可能性もあるため、診断には注意が必要です。
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◼️治療

軽度であれば消炎鎮痛剤や運動制限による対症療法を試みることもありますが、根本的な解決には至りません。犬の大きさや重症度によっても方法は異なりますが、基本的には手術が勧められます。
具体的には、腹側および背側減圧術や椎体固定術などが挙げられます。腹側減圧術は首の腹側からメスを入れる方法で、頚椎を露出してスロット(穴)を開け、脊髄への圧迫を軽減する方法です。腹側からは届かない領域(胸椎など)に病変がある場合は、背側椎弓切除術を検討します。この方法では背中側からメスを入れ、椎骨の一部(椎弓と棘突起)を取り除くことで脊髄の圧迫を軽減します。椎体固定術は不安定な椎骨を固定する方法で、骨セメントやインプラントなどを利用します。椎体固定術は不安定な椎骨を固定する方法で、骨セメントやプレート、スクリューといったインプラントを利用します。

これらの治療法はいずれも専門の知識が必要ですが、当院では外科を専門とする獣医師が所属し、数多くの症例を経験しているため、愛犬の状態にあわせて最良のご提案が可能です。

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◼️予防法やご家庭での注意点

ウォブラー症候群の発症原因はよくわかっていないため、具体的な予防法はありません。好発犬種を飼育されているご家庭では、歩く様子に注意していただき、少しでも不安に思うことがあれば動物病院へお早めに受診されることをお勧めします。

◼️まとめ

足のふらつきは様々な病気でみられるため、神経病や整形外科の専門知識をもった獣医師でなければ、正確な診断・治療に結び付かないこともあります。手術に関して不安な点があれば、お気軽に当院までご相談ください。

<参考文献>
Outcome of medical and surgical treatment in dogs with cervical spondylomyelopathy: 104 cases (1988–2004) in: Journal of the American Veterinary Medical Association Volume 233 Issue 8 () (avma.org)
Magnetic resonance imaging and neurological findings in dogs with disc‐associated cervical spondylomyelopathy: a case series – PMC (nih.gov)

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