犬と猫の馬尾症候群について│腰や尻尾の付け根の痛みが特徴
2024/04/04
馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)は変性性腰仙部狭窄症(DLSS)に代表される神経の病気で、腰と尻尾の間にある神経(馬尾神経)が圧迫されることで痛みを感じることが特徴です。大型犬で多いことが知られていますが、小型犬や猫でも起こることがあります。腰や尻尾の付け根あたりに痛みを伴うのですが、股関節形成不全や前十字靭帯断裂などの骨・関節の異常で起こる症状と似るため、診断には細心の注意が必要です。
今回は犬と猫の馬尾症候群について、基本的な情報とともに当院での治療方針を紹介します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
◼️原因
馬尾症候群の原因は大きく先天性と後天性に分けられます。
先天性では、生まれつきの骨の奇形などによって馬尾神経が圧迫され生じます。
後天性では、ハンセンⅡ型椎間板ヘルニアのように加齢とともに椎間板や周囲靱帯が変性し肥厚することで脊柱管や椎間孔といった神経の通り道が狭窄し生じます。
ジャーマン・シェパード・ドッグやラブラドール・レトリーバーといった大型犬のオスに多いことが知られていますが、トイ・プードルやフレンチブルドッグなどの中~小型犬や猫でも発症することがあります。
◼️症状
神経の病気は身体の麻痺が起こることが多いのですが、馬尾症候群では腰や尻尾の付け根の痛みがよくみられます。そのため、座りたがらない、素早く立ち上がれない、段差をジャンプしない、腰をしきりに気にする、といった症状が現れます。痛みだけではなく、後ろ足のふらつきや跛行がみられることもあり、悪化すると麻痺が生じて歩行が困難になります。
さらに重症化すると、尿失禁や便失禁が起こることもあります。
こうした症状は、馬尾症候群を含むその他の神経病、あるいは股関節炎などの整形疾患でも起こりうるので、慎重に検査を進めて見極める必要があります。
◼️診断
まずはご自宅での状態をお聞きし、実際に歩いたり座ったりする様子を観察して、どんな症状が現れているのか、どこに異常がありそうなのかを確認します。X線検査では骨を全体的に確認できますが、椎間板や神経の細かい状態はCT検査やMRI検査を実施しなければわかりません。これらの情報を総合的に判断し、治療方針を決めていきます。
◼️治療
痛みや麻痺の症状が軽い場合にはまず内科療法を行います。具体的には、運動制限を行いながら神経の圧迫による痛みを取り除く薬(抗炎症薬や鎮痛薬)を内服します。内科療法で効果が現れない場合や症状が強い場合には外科療法を考慮します。
手術では、神経の圧迫を取り除く減圧術とともに背骨を安定化する固定術を組み合わせることが多いですが、動物の状態や神経圧迫の状況によっては減圧術のみを行うケースもあります。
ご自宅では安静にしていただき、さらなる痛みを与えないよう細心の注意を払うことをお願いしています。
◼️予防法やご家庭での注意点
予防は難しい病気ですが、好発犬種を飼育されているご家庭では歩く様子に注意していただき、気になる点があれば早めに動物病院を受診しましょう。早期に診断・治療できれば動物への負担も軽くなり、より治療の効果が期待できます。
◼️まとめ
段差がうまく登れない、座りたがらないなどの症状がみられたら、馬尾症候群の可能性があります。進行性の病気のため、そのままにしておくとどんどん悪化してしまいます。ただし、その診断はいずれも専門の知識が必要です。当院では外科を専門とする獣医師が所属し、数多くの症例を経験しているため、愛犬の状態にあわせて最良のご提案が可能です。
当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
馬尾症候群について気になることがあれば、当院へご相談ください。
■日本小動物外科専門医の資格についてはこちらをご参照ください
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