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犬と猫の門脈体循環シャントについて┃毒素が体中に運ばれてしまう病気

2024/04/08

動物の体にはたくさんの血管が張り巡らされていますが、特に肝臓と腸は門脈という血管で結ばれていて、腸から取り込まれた栄養は門脈を通り肝臓に運ばれます。また、栄養だけではなく毒素となる物質も同時に肝臓に送られますが、肝臓の解毒作用により体が健康に保たれます。門脈体循環シャントとは、門脈循環と体循環(心臓を中心にして体中をめぐる血管)の間に異常な血管(シャント)ができる病気で、猫ではまれな一方で、犬(特に小型犬)に多いといわれています。
今回は犬と猫の門脈体循環シャントについて、​​その概要とともに当院での治療法を紹介します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断
4.治療
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

◼️原因

門脈体循環シャントは、先天性あるいは後天性に分けられます。
子犬(1歳未満)の時期に異常がみつかることが一般的です。特にトイ・プードルやヨークシャー・テリアなどの小型犬には、肝外性(肝臓の外にある門脈で異常がみられるもの)の門脈体循環シャントが発生します。

肝外性ほど一般的ではないのですが、肝内性(肝臓の中に入った門脈で異常がみられるもの)の門脈体循環シャントも存在し、こちらはラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーといった大型犬でよく認められます
また少数例ではありますが、肝硬変などによって門脈圧(門脈内の血圧)が長期間高くなっていると、後天性に発症するケースもあります。

猫は犬ほど発症が多くないものの、肝外性のものが多いと報告されています。

◼️症状

門脈体循環シャントで気を付けなければならないことのひとつに肝性脳症があります。
これは、肝臓に蓄えられるはずの栄養がうまく門脈に運ばれないことで、肝臓の機能が落ちるとともに、肝臓で解毒されるはずの毒素が体内に溜まってしまうことで起きる病態のことです。こうなると、ふらつきや壁に頭を押し付ける、ぐるぐると回り続ける、発作が起こる、昏睡状態に陥るといった神経症状が現れます。

それ以外にも、下痢や嘔吐などの消化器症状や、排尿障害あるいは血尿といった泌尿器症状がみられることもあります

◼️診断

上述のような症状が認められたら、まずは血液検査X線検査超音波検査などで異常がどこにあるのかを調べます。また、門脈シャントに関連して、尿路結石ができる場合があるので、結石の有無についても評価します。

血液検査では血中の肝酵素やアンモニア値の上昇が、画像検査では肝臓の萎縮やシャント血管そのものがみられる場合があります。

ただし、シャント血管の構造を三次元的に描出するためにはCT検査が必要になります

◼️治療

治療は内科療法と手術に分かれますが、特に先天性の門脈体循環シャントであれば、手術によって根治を目指すことが一般的です。手術では、開腹してシャント血管を糸やリングなどで閉鎖する方法や、X線透視下でシャント血管内にコイルを挿入することで血管を塞ぐ方法、腹腔鏡下でシャント血管を結紮する方法などがあり、当院では糸での閉鎖を行っています

なお、どんな方法でも術後に一定の割合で発作が起こる可能性があるため、術後は入院してしっかりと管理する必要があります。

◼️予防法やご家庭での注意点

先天性の場合は予防が困難です。

そのため子犬を迎えたら、食欲の程度や成長具合に気を付け、何か気になる様子があれば、早めに健康診断を受けるよう心がけましょう。

また、門脈シャントの疑いがあれば、症状が重篤になる前に手術できるよう治療を進めましょう。

◼️まとめ

門脈体循環シャントは、重篤な神経症状が起こる可能性のある病気ですが、先天性であれば手術によって根治も望めます。当院では日本小動物外科専門医も在籍しているため、より専門的なご提案が可能です。手術でご不安な点があれば、安心してご相談ください。

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当院では2023年9月現在、全国で17名のみが認定を受けている「日本小動物外科専門医」の資格を持つ院長を中心として、飼い主様に寄り添ったやさしい医療をご提供できるよう日々研鑽を続けております。
門脈体循環シャントについて気になることがあれば、当院へご相談ください。

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<参考文献>
Congenital Portosystemic Shunts in Dogs and Cats: Classification, Pathophysiology, Clinical Presentation and Diagnosis – PMC (nih.gov)

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