犬の脊髄変性症(変性性脊髄症)について
2023/05/08
犬の脊髄変性症(変性性脊髄症)は脊髄が徐々に機能を失っていく進行性の疾患です。特定の犬種で多発する傾向にあり、治療方法が確立されていない難病の一つです。ここでは、犬の脊髄変性症について解説します。
症状
犬の脊髄変性症は、椎間板ヘルニアと似た症状を呈します。また、本疾患と椎間板ヘルニアが併発している場合もあります。中~高齢で発症し、初期には後肢の運動失調がみられます。
後肢の力の入りが弱くなるため、歩様の変化や後肢の交差などがみられます。これらが時間とともに上行性に進行し、前肢の機能不全や起立不能を生じます。
さらに生命維持に必要な呼吸機能にも障害が及び、最終的に亡くなってしまいます。
初期症状が胸腰部椎間板ヘルニアと類似しており鑑別が難しい場合もありますが、脊髄変性症は数年かけて徐々に進行する慢性進行性の病気です。
原因
犬の脊髄変性症の原因は不明な点がまだありますが、SOD1遺伝子の変異によって異常たんぱく質が生成されることが要因と考えられています。
本来、SOD1と呼ばれるたんぱく質は抗酸化作用を持ち、神経細胞を酸化ストレスから守る作用がありますが、この機能に異常をきたすことが神経の変性を誘発するといわれています。
日本ではウェルシュ・コーギー・ペンブロークでの発生が多く、他にジャーマン・シェパード・ドッグやボクサー、ラブラドール・レトリーバーなどでも報告があります。
診断方法
現在のところ犬の脊髄変性症に特異的な生前診断法はありません。最終的な確定診断には病理検査が必要ですが、発症年齢や犬種、症状、神経学的検査、X線やCT、MRIといった画像診断、遺伝子検査などを総合的にみて診断します。
治療方法
犬の脊髄変性症における確立された治療は現在ありません。徐々に運動機能が低下していくため積極的に散歩に行くことや、プールや水中トレッドミルによるリハビリを行い、できるだけ筋力維持に努めていくことが重要と考えています。
また、抗酸化作用をもつ薬やサプリメントの投与、マッサージや日常のケアなど、症状に合わせた治療を行います。
予防方法
犬の脊髄変性症の発症を予防する方法は、残念ながら現在確立されていません。この疾患にはSOD1遺伝子の変異が関与している可能性があるため、この遺伝子変異の確認が発症リスクの分析に役立つ可能性があります。近親の血統で同じ疾患の発症歴が判明している犬では注意が必要です。
まとめ
犬の脊髄変性症は、治療法や予防法が確立されていない疾患です。また、日本ではウェルシュ・コーギー・ペンブロークでの発生が多く、中高齢に達した際には歩き方を中心に日頃の行動や仕草に変化が生じていないかよく観察することが推奨されます。
椎間板ヘルニアをはじめとする他疾患との鑑別をしっかり行い、可能な限り早期に診断することが重要です。
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とがさき動物病院
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